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『焦れる』

 押し退けるようにして目的の本が置いてある棚に向かう。  昼休みも終わり間近で生徒の数は少ない。 「何勝手なこと言ってんだよ」  園田が僕の背中から耳元で囁いた。 「俺は切ったつもりは無いからな」 「僕は切るよ。もう園田とはやらない」 「何だよ。寂しいとか言ってたくせに」 「何勘違いしてるの? 僕の相手は一人だけじゃないんだよ。僕を独占したとでも思ってるのかな?」  強気に言い返した。  切らないと言われた。それはまだ嫌われてはいないって言うことだ。  だったら僕は園田を付き離す。まだ大丈夫だ。 「どうかな?」  園田は呟いて意地悪く笑うと歩き出した僕に付いて来た。それを避けるように歩くから奥へ奥へと入り込んで、滅多に人の来ない貸し出し禁止の本の並んだところまでやってきてしまった。  いきなり肩を掴まれて振り返らされると同時に、本棚に押え付けられた。 「な、何するんだよ」  言い返すと、「大声出すなよ」と小声で囁かれた。  周りを伺っても人の気配はしないけど、大きな声を出すと人が来るかもしれない。  園田と同室になって『桃香と園田と梓の三角関係』や『園田の横恋慕』、『園田と付き合いだした』、『二股』なんて噂が耐えない。  だから見られたところで噂を決定打にしてしまうだけだけど……見られて楽しいことでは無い。 「……帰る」  言っても園田が帰してくれないのは分かっている。  3日。たった3日放置されただけで不安になり、切らないと言われて内心喜んでいる自分がいる。  嫌だと虚勢を張りながら、求められることに安堵している。

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