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『焦れる』
園田はそう言って立ち上がると、「帰るぞ」と言って、手を差し出してきた。
「……疲れたし、だるいし……ご飯も食べたくない」
ぷいっと横を向いた。園田の手が僕の腕を掴んで引き上げる。
「負ぶわれるのが嫌なら、お姫様抱っこでもいいんだぞ」
「馬鹿なこと言うな」
引き上げられて立ち上がる。今度はよろけずに。園田は僕の手を離さずに歩き出す。司書の姿は無く、授業が終わったばかりで生徒もいなかった。
僕は園田に掴まれている手を見つめて後ろを付いて歩いた。
手首を掴んでいるから、手を繋いでいるわけじゃない。
これなら誰かに見られても、仲良しには見えないだろう。
だけど、園田に繋がれている。
ここが学校じゃなかったら手を繋げるかな。
その大きな手に包まれて歩けるかな。
引っ張られるんじゃなくて、隣に並んで。
唇を噛み締める。
あふれ出しそうな熱い、甘い思いを堪える。
図書館を出ると、「僕は寮に帰る」と足を止めた。
「ああ」
すっと離された手を見つめて、今までつかまれていた手首を自分で掴んだ。
「俺は職員室に用がある」
去って行く園田の背中を見送った。
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