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『出会い』
部屋の行き来は無い。園田が気まぐれに誘ってくる時だけの仲でしかないのだから。
「仲良くしてたら一臣を呼んでないでしょ」
「それもそうだけど。次のテストは保険な」
もしも、どうしても僕が帰りたいと言った時のための保険。
「一臣は優しすぎるんだよ。だから、僕が甘えるんだ」
僕の逃げ場になってくれるから。
「もう寝ろ」
一臣に言われて頷いてタオルケットに包まった。
「そういえば、園田は部屋を替わったんだな」
「え?」
「前に寮長会でこの部屋に来た時は、この部屋が園田の部屋だったから」
「そうなんだ」
僕はこの部屋に来たことが無かったから知らない。一臣は寮長だから各寮長の集まる会議で来たことがあったのだろう。
この部屋は園田の部屋だったんだ……。
言われてみれば部屋に入ったときには園田の香りがした。
猛との仲を疑ったけど、それなら納得できる。
「ずっと窓部屋だったのにな」
僕もずっと窓側の部屋を利用していた。
まさか、僕が来るから変わってくれたとか……。園田も一臣と同じように寮長会議で部屋に来たことがあるから、僕の部屋が窓側だったことは知っていたのかもしれない。
「……みんな……」
優しすぎだって……。
一臣が背中から抱き締めてくる。幼いころのように。
僕はそのまま深い眠りに落ちた。
翌日にはすっかり良くなって、一臣は園田が帰ってくるよりも先に寮に帰っていった。
翌日は休みだからゆっくり寝ていられた。
夕方、園田が呼びに来るまでは。
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