「何だ。助けて欲しかったのか？」 「そうじゃないけど、あしらうのも結構面倒なんだよ」 　僕に関係ないことでいざこざに巻き込まれれば余計に面倒だ。 　化学実験室のドアを開けて園田が中に入った。 「誰もいないだろ？」 「そりゃあ、休日だから誰もいないのは分かってるけど……」 　誰かがいたら、園田とやったのか聞かなくちゃならなかったのだろうか。 　三浦……まあ、なかなかのイケメンで、生徒には人気がある。園田は誰でもいいみたいだ一度くらいはやってるかもしれないな。 　でも、その手では触られたくない。 「こっちが準備室」 　化学実験室の中を横切って、続きになっている準備室のドアを開けた。 「三浦は？」 「帰った。俺が出る時に急ぎの用があるからって。電話しながら出て行った。鍵、俺が預かってる」 　園田の手には『科学準備室』と書かれたプレートの付いた鍵。 「園田？　僕は帰るよ。まだだるいし……」 　熱は引いたけど、園田とそういうことをするような元気は無い。 「入れよ」 　園田に強引に腕を引かれて科学準備室に入った。 　そこは教室よりも狭く、教師のデスクが向かい合わせに２つ並んでいて、３人掛けほどの長いソファーが置かれているだけだった。 「誤解は解けたか？」 「誤解なんてしてないよ。園田が早漏じゃないことぐらい知ってるから」 　いくらなんでも数分で事が済むはずないことぐらい僕だって理解できる。