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『出会い』
痕なんて残さないでよ。思い出すから。
園田しか知らない。園田にしか許してない。
痕なんて残されたら今以上に囚われる。もっと、残して欲しいと望んでしまう。
園田だけだっていう証を望んでしまう。
所有物の印。
「梓?」
押し黙った僕の顔を園田が覗き込む。
「………痕は残さないで……いいから」
抱いてもいいから。
「そんなに俺が嫌いか?」
眉間に皺を寄せた園田の顔に見惚れる。短髪で男らしい端正な顔立ちの園田。
「………嫌いだったら、抱かれてない」
嫌いじゃないよ。だけど、好きだとは言えない。
「……園田は……すぐ側にいるからね」
都合がいい相手なんだと勘違いされればいい。お互い様なんだと。
「だったら、部屋で抱かせろよ」
「それは嫌」
「ベッドがいいって言ったのは梓だろうが。我侭だな」
「そうだよ。僕は我侭を聞いてくれる優しい相手が好き。甘やかしてくれて、言う事を聞いてくれて、無理強いなんてしない相手がいい」
「それが願いなのか?」
見下ろしたまま僕の肩を押さえつけている園田の腕の力が弱まった。
「僕に願いなんて無いよ。ただの理想だよ」
柔らかいベッド、甘い雰囲気、優しい声音。蕩けるように甘い囁きと愛撫。
心までも溶かして、現実を忘れさせてくれるほどの快感。
そんなことあるはずが無いけど、全てを忘れて、全てを放棄できたら……好きだと言えるかもしれない。
「嫌いじゃない」
園田の肩に両腕を回して引き寄せた。
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