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『出会い』
「え?」
「さっきのが園田だよ。僕のところの寮長」
「恋人……ですか?」
あんな人気の無い校舎で乱れた格好で出てくれば誰だって誤解する。誤解じゃないけど、恋人同士とは思わるかもしれない。
「うーん。ちょっと違うかな」
ちょっとじゃない。恋人なんて甘さは全く無い。呼び出されてヤッってお終いという関係でしかないのだから。でも、完全に否定したくは無い。
「園田とは違うから」
「それって、桃香先輩ですか?」
「違う違う。何か勘違いしてる。園田は僕だけの物にならないってことだよ」
僕だけに縛り付けることのできない相手。僕だけのものにはならない。
捕まえようとするとするりと逃げていく。園田は縛られるのが嫌いなのだろう。恋人という枠に。だから、恋愛感情を向けられると途端に冷めてしまうのだ。
「仲はいいけど一臣とは違うから。付き合ってるとか、園田と三角関係とか言われているけど、全く関係ないから」
「じゃあ、園田先輩と恋人同士になりたいってことですか?」
「響ちゃん。可愛いね。それは内緒だよ」
そんなに簡単なことじゃない。絡まってしまった感情は簡単に解くことはできない。
「でも、桃香先輩は次のテストで副寮長になってもらうって躍起になってますよ」
「そうみたいだね。ちゃんと一臣に話したんだけどな。本当、一臣は子どもなんだから」
「じゃあ、帰ってこないんですか?」
「指名されても断るよ。一臣も分かってると思うんだけどね」
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