95 / 139

『発展』

「……え?」 「呼び出しだ。ほら……」  携帯の画面を見せられて、『B寮集合。生徒が襲われた』と短いメール文を確認した。  放課後。テスト間近で先日作った模範テストの採点を寮長会でしていると園田の携帯が鳴った。  5階の会議室で全員が集まってやっていたが、「後任せるな」と園田に連れられてB寮へと向かった。  B寮の一臣の部屋にはすでに他の寮長と副寮長も集まっていたけど、部屋主の一臣と響君の姿はない。 「梓。あいつをどうにかして来い」  相良に指差されたのはシャワー室の扉。微かに聞こえる水の流れる音と……喘ぎ声?  状況が掴めなくてキョロキョロと見渡して、「響君が被害者」と春は頬を赤らめて教えてくれた。 「……一臣待ちなんだね」  襲われたのは響君ってっことは一臣はかなり動揺してるはずだ。この間言ってた、自分を見失っている状態が今なんだろうと想像出来たけど……。  みんなが集まっているのまで見失ってもらったら困る。  シャワー室の扉をノックして、「一臣~」っと呼びかける。聞こえないのか、無視しているのか返事は無い。 「一臣ぃ~?」  もう一度呼ぶと中からガチャガチャと扉を開け閉めする音が聞こえた。  すぐにタオルを巻いた一臣が出てきて、「梓。救急箱出せ」と耳元で言って自分の部屋に入って行った。  開けていいものかどうか戸惑って、とりあえず寮の各部屋に置いてある救急箱を取ってくると、「手当て必要みたいだから、もう少し待つよ」とソファーで待っている寮長たちに言った。

ともだちにシェアしよう!