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『決断』

 寮に帰って、敏弘に電話を入れるが、連休中は仕事が忙しくて会うことはできないと言われてしまった。  寮長会を兼ねた夕食を食べて、園田と一緒に部屋に帰ってきた。共同スペースであるリビングのソファーで、「他のやつらは帰省するらしいから、俺が点呼」と言いながら、何か書類を捲っている。 「何してるの?」 「寮に残る奴らの名簿と部屋番の確認」  園田の手元には休み中の寮生の入退届けがあり、机の上には部屋番号の書かれた紙があった。 「手伝う?」 「いや。すぐに終わる」  じっと見ているのも気が引けて、自分の部屋に戻ろうかと思った矢先に携帯が鳴り出した。 「……あ、一臣」  携帯の着信画面には一臣の名前が表示されている。 「もしもし?」  園田は目の前に座っている。 『……喋った』 「は?」  一臣の言っていることが分からない。僕は首を傾けて自分の部屋に行こうかと立ち上がったが、僕が変な声を上げたので、園田も不思議そうにこっちを見ていた。  携帯の通話口を押えて、「一臣から電話。ちょっと話して来る」と伝えた。  特に園田に言うことでもなかったんだけど、気にしている様子だったから言ってから自分の部屋に入った。 「一臣? 言ってる事が全然わかんないんだけど、そっちに行った方がいい?」 『今、点呼。あいつに喋らないことを喋った』  そういうことか。 「良かったんじゃない? 響君はなんて?」  一臣が喋ったってことは響君もそれを受け止めたってことで、2人が仲良くなったってことだろう。

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