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『決断』

『急に携帯渡されて。今、コンビニに来てるんですけど』  一臣って、意外と常識薄いんだな……。  改めて一臣の性格を思い出すけど、人の感情にとらわれないのが一臣だし、人と関わりを持たないようにしていたから今更意思の疎通に困難しているようだ。 「で? 同意なの?」  まさか一臣一人が突っ走ってるってことはないだろうか? 『何の話ですか?』 「一臣がメールしてきて、『ゴム以外に何が必要か?』って聞くから」 『はぁあ?』  響君の大声の後に携帯が変な音を立てた。きっと驚いて落としそうにでもなったのだろう。  響君の話を聞いて、響君が相手なのは間違いない。だけど、響君には話が通じていないようだ。 「一臣と変わって」  まだコンビニの中にはいるらしく、にぎやかなアナウンスが携帯から聞こえてきた。 『何がいるんだ?』 「いや、一臣。その前に、響君分かってなかったみたいだけど。大丈夫?」 『分かってなかったって何を?』 「一臣さ。今からヤル気なのは伝わってるみたいだけど……」  買い物の内容は響君に伝わったから一臣がその気なのは伝わったみたいだけど、響君の声音はとても恋人同士のテレというか、色気を全く感じなかった。  そういう時って、テレとか情緒とか声や仕草で伝わるものだと思う。言葉だけじゃなくて、雰囲気や態度とかで伝わるものだけど、一臣と響君の間には何も感じなかった。  まるでお菓子でも買いに行っているような、友達同士か知り合い同士のやや距離のある声にしか聞こえなかった。

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