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『決断』
目の前の園田はじっと僕を見ていて事の成り行きを伺っている。
「好きだって……言った?」
園田をじっと見つめる。
園田にもその言葉は聞こえているはずだ。僕の口から聞こえたはずだ。
『………それ』
一臣は何か納得したように返事をしたが、しばらく無言があって、『言った』と帰ってきた。
「まさかさ、今言ったの?」
コンビニの中で?
一臣の突然の行動に驚く。
園田は驚いて笑い出してしまった。
『ああ』
「一臣……響君可哀想……」
園田は笑いながらテーブルに肘をついて、やりかけの書類をめくりだした。
一臣の性格からして、雰囲気を作るとか、根回しをするとかそういったことはしない方だとは分かってたけど……今の状況はあまりに響君が可哀想だ。
『で? 何がいるんだ?』
「僕に聞かれても……」
目の前にいる園田の方が明らかに詳しいが、それを僕が園田に聞くと、いろいろとばれてしまう可能性があるので、言い出しにくい。
「ゴムがあれば大丈夫じゃないの?」
僕はいつも相手が用意してくれてるからとは言葉が出なかった。一臣は僕のことをよく知りすぎているし、園田は騙されていることを知らないから。
チラッと園田を見ると、「それだけじゃダメだろ。初めてだろ?」と携帯を貸すように言われた。
「一臣。園田と代わる」
『ああ』
携帯を園田に渡すと、「借り1な」と言って「ゴムだけじゃ血ぃ出るぞ。この時間じゃ買いにいけないからな。俺のやるから、梓に預ける。取りに来いよ」と言った。
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