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『決断』

「じゃあ、これはやらないから、お前、一臣に逐一説明して来いよ。舐めて溶かせって。なんならお前混ざって手取り足取り教えて来いよ。従弟様と仲良くしてくればいいだろ」 「そんなことするわけないだろ。借りなんて程じゃないだろ。これは今度僕が返すからそれでいいだろ」 「俺は電話で説明までしてやっただろうが。俺は一臣に教えてやるほどのお人よしじゃないんだからな。お前が困ってたから手を貸してやっただけだ」 「そうだけど……」 「今夜はお前が相手だ」  園田は少し怒ったように突き放した声で言った。 「…………」  一度大きくため息を付くと、机に置かれたチューブを手に取って、「渡してくる」と自室に飛び込んだ。  たった今出来上がったばかりの恋人同士の間に入ってエスコートするような厚顔無恥な神経は持ち合わしていない。  園田に『女王様』って嘘をつき通していても一臣がそうじゃないことは知っている。僕が誰をなんてことまでは知らないし、経験があることは知っているけど……。  今夜やらせろってことは、この部屋ってことだろうか。部屋ではしないと最初に約束した。まさかわざわざどこかに出かけるはずも無い。  紙袋にジェルのチューブを突っ込んで部屋から出ると、園田は机の上を片付けていた。 「逃げるなよ」  園田は立ち上がると自分のシャツの胸ポケットから生徒手帳を取り出して、僕の胸ポケットの生徒手帳と入れ替えた。  部屋の鍵にもなっている生徒手帳。  自分の部屋の入り口しか開かない鍵。  鍵にはハイテクな機能が付いていて、鍵の保有者が部屋にいるかを察知することができる。鍵に施されたパスワードで鍵を紛失した時は探し出せる機能もついている。

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