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『決断』
だから、僕がこの鍵を持って逃げても、園田はどこにいるのか探し出すことができるのだ。
「………わかった。でも、部屋は嫌だ」
「ああ。リビングを片付けとく」
「今夜、一度きりだからな」
園田に見送られて部屋を出た。
とぼとぼと大半が帰省してしまった静かな寮の中をゆっくりと歩いていく。
時間がかかるように。
どうしよう。一臣のところにでも逃げ込もうか。
でも園田には場所が分かってしまう。逃げるなと言われて、逃げ出したらきっと、園田は怒る。
怒ったら、僕の相手はもうしないだろう。逃げたら、追っては来ないだろう。
今夜だけ。もう、今夜きりにしよう。
何度も嫌だと、止めろと言っても抱かれてきた。
だけど、今度こそ終わりにしよう。そして、好きだと言おう。
そうしたらきっと園田は僕を手放してくれる。
僕の恋だって終わる。
長い片思いに終止符を打てる。
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