110 / 139
『熱い夜』
校門前で一臣たちがコンビニから帰ってくるのを待つ。
暗い外灯の下でため息を何度もこぼしながら。
9月の夜は少し肌寒い。コンビニまでの一本道を眺めていると数人の生徒が寮に向かって歩いて来るのが見えた。
見知ったその顔に、「一臣達は?」と話しかけると、「俺らと入れ違いだった」と返事が来た。僕のすぐ横を通り抜けて寮に入って行く。その横には可愛らしい後輩を連れていた。
後輩は嬉しそうに笑いながら後ろを付いていっている。
きっと恋人同士のなんだろう。4連休じゃ浮かれても仕方ないよね。遠出もできるだろうし、デートにも行ける。ちょっと無理したって休みだし……。
甘い時間を共に過ごせるなんて羨ましい。
僕はこれから振られるのに。
園田と甘い時間を過ごすなんて、想像もできない。園田が誰かを甘やかす姿を見たことも無いし、園田に甘えているのを見たことが無い。噂はたくさん聞いた。きっと園田に抱かれたんだろう相手と仲良さそうにしている姿を見たこともある。だけど、甘い雰囲気の園田を見たことはない。
恋愛感情に発展するとすぐに切るからだろうけど。園田も甘い言葉を吐いたりするんだろうか。
あの大きな手で髪を撫でて、優しく口付けをして、抱き寄せたりするんだろうか。
ただ、無造作に抱くんじゃなくて。
甘く溶かして、優しく気遣って……僕には一度だって無い。
初めて抱かれた時は勝手も分からずに、緊張しまくりで済んだらすぐに逃げ出してしまった。
ともだちにシェアしよう!