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『熱い夜』

 リビングは綺麗に片付けられてはいるけど、園田の姿は無い。自分の部屋にでもいるのだろうかと見渡していると、シャワー室からタオルを頭にかぶって、ボクサーパンツ一枚の園田が出てきた。 「服着てよ」  リビングは共同スペースなのだから、服は着て欲しい。 「別にすぐ脱ぐんだからいいだろ」  言い返した園田の言葉に、やっぱりその気なのかと再確認させられた。 「お前も浴びて来いよ」  僕の横を通り過ぎた園田から、園田のお気に入りのボディーソープの香りがした。  手に持っていた園田の生徒手帳をリビングの机の上に置くと、園田が出たばかりのシャワー室に入った。  脱衣所に充満する熱気と園田の香り。  くらくらする。  今から抱かれる。そう思うだけで、この香りに包まれているだけで眩暈を起しそうなほど興奮している。  時間をかけてシャワーを浴びて園田と同じようにパンツとバスタオルを肩にかけてリビングに出ると、「……待たせるなよ」と腕を強く引かれて、ソファーの上に押し倒された。 「……そ、園田」  肩にかけたバスタオルがソファーから落ちた。園田に両腕を掴まれたまま見上げる。 「何だ?」 「……頼みが……あって……」  ドキドキしすぎて口から心臓が溢れそうで、胸が苦しくて痛い。 「何だよ。頼み事なんて珍しいな」  見下ろす園田の表情は優しい。 「……ダメかな」  いつもとは違う声音と雰囲気に気圧される。 「いいぞ。言ってみろよ」  促すように顎を上げた。

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