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『熱い夜』
ここには誰もいない。誰も来ない。
いつものように人が来るのを恐れ、声を殺す必要もない。時間に追われることも無い。
「……や……しく、抱いて」
ギュッと目を閉じて、小さく、小さく呟いた。耳まで赤くなっているのが自分でも分かる。園田の反応が怖くて、ギュッとソファーを握り締めた。
こめかみに何かが触れて、息がかかってそれが園田の唇だと分かった。
「なんて、顔してんだよ」
もう一度音を立ててこめかみに口付けされた。
「優しくって何だ? 甘やかせってことか?」
園田の言葉に閉じていた目を開いた。
じっと見下ろす園田はさっきと同じ表情だ。焦りもなく怒っている風でもない。
「……き、気分だから……誰もいないし……その、2人だけだから、いつもと違うし……」
「ああ。ここなら邪魔は入らないしな。望みどおりに優しく甘やかして抱いてやろう」
語尾の方は色気を含んでいた。柔らかい表情から、一気に欲情に満ちた表情へと変貌した。
唇が触れ合いそうな距離に目を閉じたのに、そこには触れず、瞼に唇は落とされたから、落胆して、キスしてとは言えなかった。
裸の肌に触れる園田の大きな手は心地よくて、緊張を解きほぐす。軽い音を立てながら口付けを繰り返されて、くすぐったさに身体を捩る。
「なぁ、ここじゃなくて……」
「いやだ」
続く言葉を遮った。続く言葉は分かっているけど、部屋では抱かれたくなかった。これが最後になるから。
部屋で抱かれたら、きっと吹っ切ることはできない。
「狭いだろ」
園田は首から胸に唇を落としていく。首にかけられたタオルが肌を触ってくすぐったい。そのタオルを取ろうと手を伸ばす。
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