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『聞こえる恋』

 四つん這いで僕の身体を跨って見下ろしている園田の言ったことが分からなくて、どうしていいか分からなくて言葉を発せられずに見上げている。 「多分。お前が気がつくよりも昔から」  園田は少し照れたように視線を彷徨わせる。 「中等部から上がる時にお前を指名したかった」  それは園田が高等部1年で寮長になれなかったせいでもあるし、B寮が副寮長戦で1位を取り続けたせいでもある。 2年で園田が寮長に選ばれたけど、その年の副寮長戦も1位はB寮だったのだから仕方が無い。今回やっと、A寮は副寮長戦で1位を獲得して、園田は僕を指名した。  あの中学3年の時に集まった時にはすでに、園田は僕を指名するつもりでいたんだ。僕はあの時に自覚したのに。  でも、その時には園田はすでに童貞を捨てていた。近くの女子大生の話をしていたじゃないか。  これまでだって噂が途絶えたことなんて無かったじゃないか。  今更、言われてもその言葉を信じられない。 「『女王様』ってイメージを付ければ悪い虫が付かないんじゃないかって牽制だったんだけどな。まさか、本当に女王様になるとは思ってもみなかった」  そう。最初に女王様と呼んだのは園田だった。 「どんだけ下僕を連れてるんだよ」  それは僕に関する噂を園田も知っているから。園田の噂と一緒に浮上する僕の噂。年上の彼氏がいる。高級なホテルに入って行った……。  誰のことかなんて推測できている。  『もっと年上が好みなんだよ。君じゃ物足りない』『僕は激しいのが好きなんだ』『僕はもっと筋肉質なのが好きなんだよね』まあ、勘違いを生んでも仕方が無いとは思う。それに尾ひれ、背びれがついて噂は広がっていく。

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