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『聞こえる恋』

「げ、下僕なんて連れてない」  誰一人として僕を手に入れた人はいない。園田だけ。園田だけって告げたら、どうするだろう。面倒くさがるだろうか。 「両手足に余るほどなんだろう?」  意地悪く園田が笑う。 「……違う」  両手を押さえ込まれたまま首だけを横に振った。 「倍くらいか?」  園田の眉間に皺が寄る。 「その割には馴れて無いし、やったこと無いこととか多いし……」 「違う」  もう一度首を横に振った。  本当のことを言っていいんだろうか。園田は勘違いしている。このまま黙っていてもいいかもしれないとも思うけど、このまま馴れたふりを続けるのも咎める。  園田だけだと伝えたらどうするだろう。  もし、自分が園田の立場だったら、素直に嬉しいと思う。園田も嬉しいと思ってくれるだろうか。 「……違う。本当は…………だけ、園田だけなんだ」 「…………」  園田が驚いた顔をして目を見開いて見下ろしている。 「ご、ごめん……嘘。ついて」  園田が片方の手を解いて、自分の短い髪を何度もかき回して、視線を彷徨わせる。戸惑っているのがこっちにも伝わって、申し訳ない気持ちが昂ぶって、「ごめん」と何度も謝った。  だけど、園田は聞いている風でもなくて、口を開きかけては留まるのを繰り返してから、「マジか?」と聞いてきた。 「……うん」  頷いた。

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