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『聞こえる恋』

「お前の髪に触るきっかけだった」  髪を何度も撫でて、「柔らかそうだなって、撫でたいって思ってたら赤くなってたから自然と触れた」と目を細めた。  その手がまた僕の手に繋がれた。 「なぁ、明日も休みだし、いいよな」  見下ろす園田の瞳には欲望の色が移っている。表情は色っぽい。  音を立てて唇に口付けを繰り返す。初めて口付けしたばかりで、馴れないキスに戸惑う。 「そ、園田……ん……朝だし」 「今更だろ」  唇を合わせたまま喋られると、園田の声が身体の中に入ってくるような、木霊するような感覚がして、口を閉じた。  さっきまでやり直しなんて言ってたくせに、今更なんて言う。  ただ、両手を繋がれて、くすぐったいような、胸が熱くなるような感覚がそこから広がって、繰り返される口付けに身体が熱くなる。 「……ねぇ、何人抱いた?」 「それを知ってどうするんだよ?」 「別に」 「なんだよ。優越感に浸りたいのか?」  僕の為に振ってくれたと思ってもいいのだろうか。園田の抱いた数が、僕を思ってくれている数。  ただ、経験を知りたかっただけなんだけど……。 「優越感じゃなくて……ただ、数を知りたかっただけ」 「浸れよ」  口端を上げて笑う。 「浸れって言われても……僕を選んでいたからだって思ってもいい?」  遠慮がちに聞くと、「他に理由はない」と強く言われた。 「でもさ、数、多いよね?」 「心と性欲は別なんだよ」  怒ったかのように言われて、むっとしながら、「僕は違う」と言い返した。 「俺は別なの」 「じゃあ、浮気するってこと?」  性欲が満たされなければ誰でも抱くってことだろうか。 「どうかな?」  意地悪く笑う。その顔にむっとしたまま横を向いた。 「拗ねるなよ。お前が満足させてくれればいいだろ?」  言いながら横を向いて晒された首に噛み付かれた。首を竦めた。 「そ、そんなの分からないよ……どうしたら、園田が満足するのか分からないし……」 「抱かれろよ」  低い声にゾクリとした。 「……うん」 「優しく、甘く……満足させてやる」  舌を首から顎まで這わされて、仰け反ってその唇が触れるのに期待に唇が細かく震えた。

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