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『女王様と呼んで』
軽く唇に触れて離れると、髪をかき上げた手が頬を撫でた。
「なぁ。やっぱり、旅行に行こうぜ」
急な話の展開に顔を顰めた。
「だってよぉ。せっかくの連休だったってのに楽しめなかっただろう?」
「まぁ、それはそうだけど。旅行はいいよ」
特別なことをする必要はない。ただ、こうして穏やかに一緒にいれさえすればそれでいい。部屋でも一緒にいられるのだから。
これまでのように駆け引きなんてなく、意地を張ることもなく、穏やかに。
髪を撫でている園田の手を掴んで両手で胸の前で握る。
「テツ……キスして」
穏やかな時間を実感するだけで、園田が側にいてくれるだけで涙が溢れそうなほどに愛しくなる。
触れるだけの口付けをしてすぐに離れる。
「もう一回」
園田が笑いながら何度も口付けをして、「アズ。これ以上はやばい」と呟いた。
握っていた手を解いて、屈んでいる園田の首に両手を絡めて引き寄せる。
抱きついて、すっと離れて起き上がった。
「うん。午後の授業が始まるね。今日は放課後全寮長会議だよ」
「そうじゃねぇ」
園田は怒ったように呟いて、起き上がった僕の肩を引き寄せると、口付けてきた。唇の間から舌が滑り込み、激しく深く口付けられる。
上あごを擽られるとそこから甘く解かされる。
僕の頭を庇って、コンクリートの床に押し倒された。
「こっちのことだ」
グイッと押し付けられる腰。
「分かってるよ」
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