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とろけるくらい

「篠宮さん。俺……あなたが好きです。愛してる。この世の誰よりも……その気持ちだけは、誰にも負けません。本当は、ずっとどこかに閉じこめて、他の奴になんて見せたくない」  篠宮の頰に指を這わせながら、結城はそっと口接けを繰り返した。 「ね、篠宮さん。お願いです。他の奴に色目なんか使わないで。俺だけ見て。俺だけ愛してよ」 「色目なんて使ってない」 「篠宮さんのほうにそのつもりがなくても、周りはそうじゃないんですよ」  結城が篠宮のシャツのボタンに指をかけた。ひとつ外すごとにくちびるを寄せ、肌に指を滑らせ、舌先を使って愛撫する。胸の突起が、すぐに反応してぷっくりと立ち上がった。 「ね、ほら……綺麗でしょ? これ見たら誰だって、触ってキスして……滅茶苦茶にしたくなる」  篠宮のベルトを外し、結城は腰から下の衣服をまとめて引き下ろした。あっという間に、下半身が無防備になる。 「や……やめろ」 「よく言うよ。縛られて感じてるくせに」  片眉を上げて嘲笑うと、結城は篠宮の両脚の間に口接けた。熱い吐息をわざと吹きかけるようにしながら、まだ軟らかいその部分を舌先で軽くつつく。 「ほら……大きくなってきたよ」  恍惚とした声で呟き、結城は篠宮の幹の部分に手を添えた。指で輪を作り、根元から強めにしごき上げる。すぐに硬くなったそれを、結城はためらわず口の中に含んだ。  奥まで受け入れて、喉を鳴らしながら吸い上げたかと思うと、今度はくちびるを使って先端だけをくわえるようにする。緩急をつけたその刺激に、篠宮はたちまちのうちに音を上げた。 「やめっ……出る」  腰をよじって、篠宮は結城の口の中から逃れようとした。両手が自由だったら、思いきり突き飛ばしているところだ。 「なに、遠慮してんの? 出しなよ。飲んであげる」  短く呟いて、結城は再び篠宮のものを口にくわえた。手のひらで根元を包み、くびれた部分をくちびるで甘噛みし、先端を舌先でこじ開けようとする。篠宮が耐えきれずに精を放つと、結城はごくりと音を立ててそれを嚥下した。 「ん……:美味(おい)しい」  うっとりとした顔で結城が眼を閉じる。吐精を終えた篠宮の頭に、急に理性が戻ってきた。 「馬鹿っ。そんな物、:美味(うま)いわけ……!」  精液の味なら、篠宮も自分で味わったことがあった。青くさく、舌触りも卵の白身のようで、とても飲めたものではない。その時のことを思い出して、篠宮は眉をひそめた。あんな物を口の中いっぱいに出されたら、自分なら我慢できずに嘔吐してしまっていただろう。 「ねえ篠宮さん。男同士で愛し合うのって、いけないことだと思う?」  達したばかりの篠宮のものを指先で撫で、結城は低い声で問いかけてきた。 「ばっ、馬鹿、触るな」  敏感になっているその部分をさらに刺激され、篠宮は悲鳴をあげた。両手を縛られ脚を押さえつけられているせいで、身動きがとれない。 「んー。篠宮さん。ローションあったっけ? ここだったかな」  結城がいきなり能天気な声を出した。  篠宮の話などまったく聞いていない様子で、覆いかぶさったまま手を伸ばし、ベッドの宮棚を探る。引き出しを開けて目的の物を見つけると、結城はすぐに蓋を取って、中身を篠宮の萎えたものに塗り付けた。 「……俺は思わないな。好きになったら仕方ない。男同士でも女同士でも、好きに愛し合えばいいと思うよ。でも、あなたを愛するのは……男の俺が、同じ男であるあなたを愛するのは、きっと罪だよね」  唐突に話を戻し、結城は指先で篠宮の先端をくりくりと:捏(こ)ねまわした。ローションの助けを借りたためか、達した後にすぐ触られた時のくすぐったさが少し和らぐ。それでも、親指の腹で同じところを繰り返し擦られると、粗相をしてしまいそうな奇妙な感覚がしだいに強くなってきた。 「ねえ篠宮さん。この世にあなた以上の人は居ない。綺麗で気高くて頭脳明晰で、顔も身体も心の中も、何ひとつ非の打ちどころがない……もしあなたに子供ができたら、その子供もきっとそうなるでしょうね。そして、そのまた子供も……それを俺がここで絶やしてしまうのは、罪だと思わない?」 「待て、結城……放してくれ。そこ……変な感じだ」 「あなたのここから出てくる蜜……とろけるくらい、甘くて美味しいですよ。だって、世界でいちばん優秀な遺伝子を、俺が独り占めしてるんだよ? そう考えると、ぞくぞくしない?」 「やめてくれ、そこ、や……なんか、変っ」 「たとえあなたを愛することが罪だとしても、俺は喜んで、その罪を地獄に背負っていくよ……愛してる。愛してるよ、篠宮さん」  独り言のように呟きながら、結城がいちばん敏感な先端だけを:弄(いじ)り続ける。篠宮の目尻から涙が:零(こぼ)れ落ちた。 「やっ……なんで、そこ……ばっかり」 「うーん、なんていうか。実験?」  結城は場違いなほど軽い口調で答えた。夕食のメニューのことでも話しているような声だ。実験とはどういう事なのだろうか。意味が解らない。

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