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すべてを溶かして

「あっ、あ……」  我慢できずに甘い声が漏れる。内側の壁が淫らに動いて、体内の侵入者に歓迎のキスを浴びせた。 「もう……今からそんなに感じてたら、あっという間に終わっちゃうでしょ。まだ締めちゃ駄目。深呼吸して、力抜いて」  結城が僅かに腰を進める。彼を包む内側の粘膜が、体内のものをさらに奥へ誘い込むように、緩やかに蠕動し始めた。 「やっ、あ、結城」 「締めちゃ駄目だってば」  余裕のなさをうかがわせる固い口調に、篠宮は驚いて結城の顔を見上げた。  滑らかな彼のひたいに、玉のような汗がいくつも浮かんでいる。今すぐ放ってしまいたい気持ちを抑え、恋人がより深い快感を得られるように耐えているのだろう。その表情を見ていると、愛おしいという気持ちが胸の底から切ないほどに沸き起こってきた。 「ふ……うっ」  いちど呼吸を止め、篠宮は腹の底からゆっくりと息を吐いた。呼吸に集中することで、結城をくわえ込んだ肉の環が少しだけ緩む。 「そう……上手だよ。そのまま力抜いてて」  篠宮の手を優しく握り、結城は緩やかに腰を前後させた。 「最初のうちは、浅いとこで動かすから。ぎゅってしたくなっても我慢して。いい? 力入れちゃ駄目だよ。前も触っちゃダメ。後ろだけで感じて」  後孔が柔らかく広がって先端だけを含んだかと思うと、次の瞬間、ぎりぎりまで引き抜かれる。結城が腰を引くたびに、ちゅぽ、と卑猥な音がした。いやらしく吸い付いているのが判るような音だ。 「慣れてきたね……もう少し挿れるよ。まだ、力は抜いたままでいてね」  結城がほんの僅か腰を前に出す。内側のぷっくりとしたしこりを先端でつつかれ、篠宮は甘い悲鳴をあげた。 「ひっ、あ」 「ここ、感じるでしょ?」  じっくりとこね回すように刺激され、腰が勝手にぴくぴくと動く。だが、結城の腕に何度も抱かれて開発された篠宮の身体は、これよりもさらに深い快感を知っていた。 「やっ、結城、もっと……奥」  すぐに物足りなくなり、篠宮は自分から腰を突き出した。気配を察した結城が、すぐに後戻りして奥まで入ることを防ぐ。 「駄目だよ。篠宮さん、奥突かれるとすぐイっちゃうでしょ。まずはこっちで気持ち良くなってからね。もうちょっと我慢して。すぐに、腰が抜けるほどイかせてあげるから」  安心させるように声をかけ、結城は抜き差しを再開した。張り出した笠の部分が、容赦なく感じる場所に引っかかる。 「ふ……あっ」  眉根を寄せ、篠宮は結城の手を握り締めた。肉体と思考のすべてを溶かしてしまいそうな愉悦の波に、両脚を震わせながらなんとか耐え抜く。 「頑張って……俺も我慢するから。ほら、ゆっくり息吐いて」  結城が同じように快楽に耐えているのを見て、篠宮は健気にその指示に従った。内側の壁が、もっと強い刺激を求めて蠢きだす。いま中を締めたら、多分そのまま射精してしまうだろう。 「ああっ、もう……! まだ途中なのに、気持ち良すぎてどうにかなりそうだよ。俺、最後まで()つかな……? 篠宮さんがこんな名器じゃなきゃ良かったのにって、いま初めて思ったよ」  腰から這い上ってくる愉悦に耐えるように、結城は拳をぎゅっと握り締めて次の言葉を紡いだ。 「じゃ、次……奥まで挿れるよ。深呼吸して。まだイっちゃ駄目だからね」  結城がゆっくりと腰を進めた。  大きく張り詰めた先端が最奥の壁に触れる。身体の芯がぴく、と震えた。 「結城、いや、も……うっ」  まだイっちゃ駄目。身悶えしながらも、篠宮は忠実に結城の指示に従った。両の目尻から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。結城の指先がその雫を優しく拭った。 「もう少し……ね、篠宮さん。俺の言いつけ守って我慢してるその顔、すごく色っぽいよ。可愛い……愛してるよ」 「やっ、結城、もっ……許して、ああっ」 「まだだよ」 「も、嫌……イク、うっ」  なぜこんなに我慢させられなければいけないのか。もう限界だと思った瞬間、結城の口からようやく許しの言葉が飛び出した。 「そろそろかな……いいよ、篠宮さん。締めて。思いっきり」  じっくりと(なら)すように奥を広げられ、篠宮は腰を震わせた。達することを禁じられていたためか、身体の奥がこわばってしまい、思うように動かない。 「あっ、あ……!」 「ほら。イきたかったんでしょ? もういいんだよ? 中でイッて」  結城が少しずつ腰の動きを速める。ぬかるんだ肉の壁が、彼に合わせてきゅ、きゅっと立て続けに締まった。 「んっ、結城……結城ぃ」  恋人の名を呼ぶ声が、自分でも信じられないほど甘ったるく変化していく。身体の奥がとろりと溶ける感覚があった。最奥の粘膜が細かく震え、収縮しはじめる。 「んあっ、あ、ああっ」  今までにない大きな波が来る予感に、篠宮は上ずった声を漏らした。腰が浮き上がり、足の指がぴくぴくと痙攣する。 「あっ、あ、結城」 「……来た?」  結城の問いかけに、篠宮は必死にうなずいた。絶頂の瞬間がすぐそばまで来ているのが分かる。 「いや、あっ、何……なんか、おかしい、あっ」  言い知れぬ恐怖を感じて、篠宮は固く眼を瞑った。眼の前にある結城の身体にしがみつき、汗ばんだその背中に激しく爪を立てる。

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