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君なんか大っ嫌い
「やっ、ちょっ待って篠宮さん、そんなに腰使わないで」
焦りが混じり始めた結城の声を無視し、腰を浮かせて思いきり奥まで受け入れる。反り返った切っ先が、最奥の壁を繰り返しノックした。
「篠宮さん、今日はずいぶんとじゃじゃ馬だな……! 目隠しされて、いつもより感じてるの?」
口だけは達者なものの、はあはあという荒い息が、結城が早くも崖っぷちにいることを示していた。
ベッドでいつも主導権を握っているのは結城のほうだ。その彼をそんな状態にしていることに興奮し、篠宮はわざと煽るように腰をくねらせた。
「あ、んっ、結城……いいっ、気持ちいい」
「ああもうっ、保たないなこれ……! ねえ篠宮さん、シャワー浴びてごはん食べたらもう一回だからね? いい?」
覚悟を決めたような結城の声が聞こえる。うなずく間もなく脚を押さえこまれ、最奥を激しく突かれた。
「いいっ、いい……あっ、ん……イく」
いちばん敏感な奥の部分を小突かれながら、ローションでとろとろになった手で前を握られる。同時に前後を刺激されると、絶頂の瞬間はあっという間に訪れた。
「あ……! あ、んんっ」
「イくよ」
篠宮が放つのとほぼ同時に、熱く滾った欲望が奥に注ぎこまれる。意識して後孔を締め、根元から精を搾りあげると、篠宮はようやく満足しきって溜め息をついた。
「あー、良かった……やっぱ篠宮さんのここ、最高だよ」
満ち足りたように笑いながら、結城は篠宮の目隠しを外した。汗で張り付いた髪を指先でかき遣り、まだつながったままの下肢を離れないよう強く押しつける。欲望を解き放っても、結城のものは完全には萎えず、求められればすぐ応じるだけの力を秘めていた。
「目隠ししてエッチしたいって、お願いしたのは俺だけどさ。やっぱり、篠宮さんの綺麗な顔をこんな物で隠しちゃうのはもったいないな。たしかに感じやすくはなるけど、篠宮さん、もともと超敏感だし。それに篠宮さんのほうも、俺の顔好きって言ってくれたでしょ。目隠ししたんじゃ、篠宮さんが大好きな俺の顔、見られなくなっちゃうもん」
言っているうちに昨夜のことを思い出したのか、結城は目尻を下げてにやけた顔を見せた。
「えへへー。篠宮さん、正常位がいちばん好きなんだよね。俺の顔見ながら、こうやって抱っこされてキスされて中出しされるのが大好きなんでしょ?」
この上もなく嬉しそうな表情で、結城が頰を緩ませて笑う。整ったその顔を見ながら、篠宮はわざと不機嫌に見えるよう口を閉ざした。
昨夜の電話では、顔を見られない寂しさも手伝ってつい本音を口にしてしまった。あんなこと言わなければ良かったと思うが、後の祭りだ。
「ほら。篠宮さんのご要望どおり、中にいっぱい出してあげたよ。こぼれてこないよう、このまましばらく栓しとこうか?」
結城が腰を前に突き出す。つながった部分がくちゅ、と淫らな音を立てた。
「ばっ、馬鹿……早く抜け」
「駄目だよ。俺の精子くんたちには、この後も篠宮さんを気持ちよくするって大事な役目があるんだから」
恥じらいのひとつもない結城の言い草に、篠宮は顔を紅くした。だが恋人の精を中で受け止めることで、単に身体をつなげただけでは得られない充足感があるのは事実だ。今この瞬間も、彼の分身が内側に留まって、恋人に快感を与えたいという主 の想いを全うしようとしている気がする。
「ねえねえ。今度、後ろ舐めてもいい? もう、花の蕾みたいで可愛くってさあ。今回は我慢したけど、次は我慢できそうにないよ」
篠宮が口をつぐんでいるにも関わらず、結城は機嫌良さそうに一人で喋り続けている。
「ねえ、篠宮さん。もう……なんか言ってよ」
すぐには返事をせずに、篠宮は結城の顔を思いきり睨みつけた。恋人を困らせるため、結城は故意に答えにくい事ばかり言っているのだ。そう思うと腹が立って仕方ない。
「まったく。初めてがどうのなんて話をするから、反省しているのかと思えば……すぐこれだ」
「反省はしてるよ。でもきっかけはどうあれ、今の俺たちが相思相愛なのは事実だもん」
幸せそうに笑いながら、彼は篠宮の胸に頰を寄せた。切り替えの早い結城らしい。
「ねー。『愛してる』って、もう一回言って? ねえねえ」
「……君なんか大っ嫌いだ」
眉をしかめてそう言い放つと、篠宮は恋人の首に腕を回してキスをした。
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