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協力プレイ

 その写真をもういちど見直し、篠宮はようやく思い至った。これは、結城が最近よく使っている携帯ゲーム機だ。結城が持っているのはワインカラーだが、色が違う点を除けばまったく同じ物に見える。 「これなら、もう持ってるだろう。ただの色違いじゃないのか」  こういったゲーム機は、色によっては、生産状況や人気の有無でプレミアが付く物もあるという。てっきりこれもそういった類(たぐい)の物かと思ったが、結城の答えは篠宮の予想とは違っていた。 「だって。もう一台あったら、篠宮さんと一緒に通信プレイができるじゃん! 一人でやるのも楽しいけど、あのゲームの醍醐味はやっぱり協力プレイにあるんだよ。ねえ篠宮さん、一緒にハンターズワールドやろうよ」 「おっ、いいねえ。お兄ちゃん」  屋台の店主が合いの手を入れた。さすがに商売上手というべきか、いかにも射幸心を煽りそうな声音ですかさず口上を述べる。 「マットブラックは生産が追いつかなくて、今かなり品薄になってる人気の色なんだ。この機会にぜひぜひゲットして、お友達と通信プレイしちゃってくれよ」 「うーん……」  低い声で呻きながら、結城は一等の的を見つめた。だいぶ心が動いている様子だ。 「でもなあ……射的の一等の的って、弾が当たっても倒れませんよね。もしかして、接着剤でくっつけてあったりしませんか?」 「やだなあお兄ちゃん。んな事あるわけねえだろ。今時そんなことやったら、すぐネットで拡散されて大炎上だぞ。ほれ、見てみぃ」  そう言って店主は『一』とマジックで書かれた的を、ひょいと持ち上げてみせた。小さくて少し狙いにくくはなっていたが、うまく弾が当たればもちろん倒れるだろう。射的の一等としては順当な仕様に見える。それを見て結城は心を決めたようだった。 「よし。篠宮さん待ってて! 俺、篠宮さんとのラブラブ通信プレイのために、絶対マットブラックを手に入れるから!」  結城が財布を取り出した。代金と引き換えに店主からおもちゃの銃を受け取り、真剣な顔で狙いを定める。 「はあ……」  止めるべきかどうかと迷いつつ、篠宮は溜め息をついた。自分がゲームをしているところなどまったく想像がつかないが、結城がどうしてもと言うなら、少しくらい付き合ってやってもいい。 「弾は三発だからね! よーく狙ってよ!」  店主が激励の言葉をかけると、周りの小学生たちも応援の声を上げた。 「お兄ちゃん、頑張って!」  子供たちの声を背中に浴びながら、結城が引き金に指をかける。完全に同列の扱いだ。 「子供と一緒だな……」  小声で呟いてみるものの、浴衣姿でおもちゃの銃を構えた結城の姿は、どこか微笑ましいようにも思える。恋人の欲目かと自らに呆れつつ、篠宮は静かに彼の後ろ姿を見守った。

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