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終わらなければいい
「たしかに自然には恵まれているが……ここには、娯楽施設も何もないだろう。今は各企業がこぞって、イベントだの新しいアトラクションだの、あの手この手で客の興味を引こうとする時代だ。刺激に慣れた現代人にとっては、退屈すぎて間がもたないんじゃないか」
「えーと、つまり。恋人同士でここに来ても、買い物もできないしテーマパークみたいに遊べるわけでもないし、そんなに楽しめないんじゃないかってこと?」
いつのまにか残り少なくなったサンドイッチをつまみ、結城が三杯めのシャンパンをグラスに注ぐ。瓶が早くも空 になった。
「まあ……簡単に言えばそういう事だ」
篠宮がそう言うと、結城は身をかがめるようにして恋人の顔を下から覗きこんだ。
「篠宮さん、俺といて退屈?」
「私の話ではなくて、つまりその……一般論を言っているんだ」
退屈などしていない。そう素早く切り返しかけたものの、篠宮は途中であることに気がついて語尾を濁した。恋人と一緒なら、どんな場所でも構わない。君と居れば幸せだなんて、そんな恥ずかしい意味を含んだ台詞を口にできるはずがない。
「君はどうなんだ」
照れを隠すために顔をそむけ、篠宮は結城の表情を横目でうかがった。結城がたちまち相好を崩し、篠宮が言えなかった台詞をさらりと口にする。
「俺は篠宮さんさえ居てくれれば幸せ。この蜜月が、ずっと終わらなければいいと思うよ」
その言葉を証明するかのように、結城がそっとくちびるにキスをしてくる。それだけでは飽き足らなかったのか、彼は篠宮の後頭部に手を回し、静かに体重をかけて草の上に押し倒した。
「待て結城……いくらここが平和だとはいっても、こんな草の上で昼寝はできないぞ」
「いや……お腹がいっぱいになったら、次はこっちかなって」
微かに頰を染めた結城が、シャツの上から胸の辺りをまさぐる。少し酔っているらしい。相変わらず待ての出来ない駄犬に、篠宮は眉をひそめて抵抗してみせた。
「やめろ……こんな所で」
草の上に横たわったまま、篠宮は人目が有りはしないかと、いつもの癖で左右を見渡した。周りには大きな樹の幹と、低木の茂みが僅かにあるだけだ。視界をさえぎっているとは言いがたい。
「大丈夫、誰も来ないよ……こんな機会、滅多にないんだから」
熱に浮かされたように囁き、結城は篠宮のシャツの裾を引き出した。隙間から手を入れて脇腹を撫で、胸の突起をくりくりと指先で刺激する。
「あっ、馬鹿……やめろ」
「もうっ、そんなエッチな声出さないでよ……余計に止まんなくなる」
口封じをするようにキスを落としなから、結城は篠宮の腰を手のひらで撫でた。身体の中心がすぐに反応し、頭をもたげ始める。
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