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思う壺
「愛してるよ」
「あ……」
耳許で優しく囁かれ、さらに頰に血が昇っていく。居たたまれない気持ちで、篠宮は背を丸めて縮こまった。こんなに照れてみせては余計に結城の思う壺だが、どれだけ経験を積もうと、恥ずかしいという気持ちは抑えられない。
「えへへー、脱がしちゃおー。知ってる? パジャマとかパンツって、後ろからのほうが脱がせやすいんだよ」
どうでもいい豆知識を披露しながら、結城が布団の中でパジャマのズボンを引き下げる。中年親父かと思うような手つきで執拗に双丘を撫で回したかと思うと、結城はおもむろに狭間を押し開いて、そこに指を当てた。
「しっとりして、ちょっと柔らかくなってるね……お風呂で洗ってきたの? 肌もすべすべで、化粧水みたいな匂いがする……俺に可愛がってほしくて、一生懸命お手入れしたんだ? あーもうヤバい……今すぐ挿れたくなってきた」
結城が微かに身じろぎする。次の瞬間、冷んやりとしたローションが後孔に触れた。いつもなら結城が手のひらで温めてくれるのだが、今日はそんな余裕もないらしい。
「ごめん、冷たいよね……でも、早く繋がりたい」
情欲に掠れた声で呟き、結城が指を一本ずつ差し入れていく。風呂で温めてあったせいか、固く閉じた蕾はいつもより早くほころび、すぐに彼を受け入れられる状態になった。
「そろそろ大丈夫かな」
身体を起こし、結城は枕の下から避妊具を取り出した。
「……着けるのか」
腰をひねって後ろを見ながら、篠宮は呟いた。結城が薄いゴムを先端に当て、くるくると根元までかぶせている。
付き合い始めの頃は着けていたが、今では二人が愛を交わす時に避妊具を使うことなどほとんど無い。わさわざ用意してまで使うのは、何か理由がある時に限られていた。
思っていたことが顔に出てしまったのだろうか。篠宮の表情を見ると、結城は可笑しくてたまらないとでもいうように、眉を寄せて笑った。
「そんな残念そうな顔しないでよ。篠宮さんが中出し大好きなのは知ってるけど、明日は車で移動したり飛行機に乗ったりするんだから、身体が辛 くなったら困るでしょ」
「なっ……別にそんな、好き、とか」
顔を赤らめ、篠宮は耐えきれずに眼をそらした。ごく薄いゴムの膜ではあるが、着けるか着けないかでは格段に感じかたが違う。いつのまにか裸で愛を確かめ合うようになってしまったのはそのせいだ。
篠宮にとっていちばん甘美なのは、最後の瞬間だった。最奥に熱い飛沫 を打ちつけられると、気を失いそうなほどに感じてしまう。その時のことを考えただけで、腰の奥が甘く疼いた。
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