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未知の快楽
体内にあった彼のものが、再び硬度を増していく。ほんの数分しか経っていないのに、こんなに早く回復することが有り得るのだろうか。敏感になった粘膜を舐め上げるように擦られ、篠宮は悲鳴をあげた。
「んっ、動くな、あっ……!」
「ああ……篠宮さん。中、トロトロですごくいいよ……」
「やめてくれ結城。まだ、イッたばっか……あっ」
抜き差しされるたび、ぐちゅ、と湿った水音が聞こえる。足を縛った紐がぎりぎりまで引っ張られ、伸びきって足首から外れた。
だが今さら足だけ自由になったところで、逃げようがない。抗う間もなく両脚を抱え上げられ、最奥まで貫かれた。
「いやっ、そんな……深っ、んん……!」
奥を突かれると声が抑えきれなくなった。内腿がぶるぶると震え始め、自分の意志ではどうにもできなくなる。
「やっ、も……いく、うっ」
「イッてよ、篠宮さん。何回でも、好きなだけ」
身体が浮き上がるような気がして、篠宮は思いきり眼を瞑った。まぶたの裏に火花が散る。太くて長いものを出し入れされるたび、自分の中が動いて快楽を貪り取ろうとしているのが解った。
「そんなに夢中になってしゃぶりついて。よっぽど気持ちいいんだね。前もびしょびしょだよ。こんなに濡れるんだったら、ローション要らなかったな」
屈辱的な結城の言葉さえ、感度を高める役にしか立たない。しだいに絶頂へと追い詰められ、篠宮は泣きそうな声で快感を訴えた。
「あ……い……いく、イクッ」
内壁が細かく痙攣した。自分の中が柔らかく蕩け、彼に絡みついて射精を誘っている。続けざまに突き上げられ、篠宮は我慢できずに後ろの刺激だけで精を放った。
「いや、い、あっ……!」
ぎゅっと締め付けると、そのぶん中が圧迫されて余計に感じてしまう。何かに掴まりたいのに、手首を縛られているせいでそれもできない。
「んっ……出すよ」
抑えた声とともに、熱いかたまりがぶつけられた。体内の彼が脈打つたびにどくん、どくんと精液が噴きつけられる。結城が大きく息をついた。
……ようやく終わった。
そう思って篠宮は安堵した。自分の中はまだ、初めての快感に泣きむせぶように震えている。これ以上未知の快楽を与えられたら、自らの身体がどうなってしまうのか見当もつかない。
結城が動き始めたのはその時だった。
結合部をぐっと密着させ、中をえぐるように腰を回す。軽く一突きすると、彼のものが一気に硬さを増した。
「ゆ、き、やめ……いま、も、イッてる、からあっ……!」
いちばん感じる所をぐりぐりと押されて、足の指が反り返る。短い間隔で何度も奥を叩かれると、蕩けた粘膜がそれに媚びるように繰り返し収縮した。もう自分では制御できない。
「やっ、また……ああっ!」
達しているのに、さらに上へと追い上げられる。内壁が絶え間なく痙攣し、気が遠くなった。
「も……は、はなっ……せ……んうっ!」
泣きながら懇願しても、結城は口をつぐんだまま離れようとしない。もう涙で霞んで、彼の表情すらうかがい知ることはできなかった。
「ああ……んっ」
内部に熱いものが広がる。
また射精されたのだ。そう思ったのも束の間、間をおかずすぐに結城が腰を揺らし始める。
「やだ、もっ、むり……いっ!」
中に何度も注ぎこまれ、これで終わりだと思っても、結城は驚異的な速さで回復して繰り返し篠宮を苛んでくる。立て続けに絶頂に追いやられ、気を失うことすらできない自分の身体を篠宮は呪った。
「も、やっ……あ、いく、イく、うっ……!」
喉元に口接けられ、中を容赦なく穿たれ、熱くなった粘膜に欲望を叩きつけられる。それが何度繰り返されたのだろう。
一度も抜かずに攻められ続け、もう何回射精されたのかも判らない。身体のすべてが過敏になり、どこを触られても快楽しか感じなかった。前の部分はすっかり萎えきって、それでも突かれるたびにだらだらと精液を垂らしている。
「篠宮さん……」
陵辱の最中とは思えない優しい声で、結城は篠宮の名を呼んだ。
愛おしむような、甘やかな声音。それが耳に触れた瞬間、大きな波が再び訪れた。
「うあ、ゆ……き、もう……!」
引き絞られるような感覚と共に、身体の奥がぎりぎりと結城を締め付ける。両脚の間のものが跳ね、残った精液がすべて噴き出していくのがわかった。
「ん、うっ……!」
低く呻いて、結城が最奥で精を解き放つ。最後の一滴を注ぎ終わると、彼はまだ痙攣し続けている篠宮の内部から、自分のものをそっと引き抜いた。
「愛してます……篠宮さん」
壊れ物を扱うように頭を抱き、結城が頰を押し当ててくる。まぶたを閉じたまま、篠宮はそのことを肌で感じ取った。疲れきって眼を開けることさえできない。
温かい水がこめかみを伝っていく。目尻に溜まった涙が、瞼を閉じたことでこぼれ落ちたのだろう。
思えば、久しく涙を流した記憶がない。泣くほどに心を動かされたことなど、物心ついてから今まで一度もなかったのだ。
今日この時で、今まで溜まっていた涙はすべて流し尽くしたのではないか。眠りの淵へ落ちていく中で、篠宮はそんなことをぼんやりと考えていた。
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