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ちょうどいい

「いや、親父のほうはとっくに認めてたんだよ。でも、彼女のほうがちょっと渋ってて」 「どうしてまた……相手は、大企業の社長の息子だぞ。普通に考えたら玉の輿じゃないか」 「まあ彼女にとっては、それがちょっとプレッシャーだったのかな。その彼女、兄貴と同級生なんだよね。社長の長男だってことに加えて、兄貴と同じ歳だっていうことが引っかかってたんだと思うよ」  どこか言いづらそうな様子で、結城が語尾を濁す。篠宮は疑問に思って尋ねた。 「同級生と結婚するなんて、別に珍しくもないだろう。それのどこが問題なんだ」 「歳より若く見えるけど、うちの兄貴ももう三十過ぎなんだよね。つまり、彼女も同じ歳ってこと。まあそこはちょっとデリケートな問題というか……ほら、年齢が進むと妊娠しづらくなるって言うじゃない。大企業の社長の息子で、しかも長男……女性としてはやっぱり、いろいろ考えちゃうんだろうね」  話しながら腰を抱き寄せ、結城は篠宮の頰についばむようなキスを浴びせた。 「でも兄貴としては、どうしても結婚したかったんだろうねー。子供ができるかどうか心配なら、できてから結婚すれば良いって、そう提案したらしいよ。つまり結婚の連絡が来たってことは……ついに俺にも、甥っ子か姪っ子ができたってわけ。しかも! 双子らしいよ。おめでたいよね」  篠宮に寄りかかって頰を押しつけ、結城が同意を求める。だが、もともと子供が苦手な篠宮としては、手放しに賛同できる話でもなかった。 「いきなり双子か……? 子育てが大変そうだな」 「もう。なんで篠宮さんは、そうやってマイナス方向に考えるの? って……へへ。だからこそ俺とバランスが取れて、ちょうどいいんだけどね」  篠宮の顔を覗きこんで視線を合わせ、結城は向日葵の花を思わせるような明るい笑みを見せた。 「そういえば、佐々木さんと牧村さんのとこにも子供ができたんでしょ? 保育園での取材の仕事といい、なんか最近、子供に縁があるよね!」  結城のその言葉を聞き、篠宮は佐々木と牧村が、妻が懐妊したと報告した時の表情を思い出した。二人の顔は喜びに満ちあふれ、幸せそのものといった様子だった。結城の兄だって、待ち望んでいた子供ができたのだから、きっと同じ思いを感じていることだろう。  自分の子供ができるというのは、どんな気持ちなのだろうか。今まで気にしたこともなかったが、こう立て続けに同じ話題が続くと、子供嫌いの篠宮もさすがに少し考えてしまう。

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