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いつまでも

「あの、篠宮さん。もしよかったら、どうして駄目なのか聞かせてもらえないかな。なんかさ。いつも俺が一方的にプロポーズして振られてるだけで、ちゃんと真面目に話したことって、無かったような気がする」  膝立ちになって篠宮の手を握り、結城は小首を傾げて問いかけた。  篠宮はすぐには答えなかった。明るくて容姿端麗で、一緒にいると癒されて、その上こんなに一途に自分を愛してくれる。そんな彼のプロポーズを断るなんて、自分でもどうかしているとは思う。 「もう何回も言ってるから、有り難みも特別感も、何も無いかもしれないけどさ。俺、本気なんだ。この世に篠宮さん以上の人は居ないと思ってる。ずっと大事にするよ。冗談とかじゃなく、本当に一生愛して、そばに居たいと思ってるんだ」  篠宮の手を握り締め、結城はなおも懇願するような瞳で訴えかけた。 「たしかに、俺たち二人の間に子供はできない。でも、子供が居なくたって幸せな夫婦はいっぱい居るよね。俺は子供なんか要らないけど、もし篠宮さんが自分の血筋を残したいなら、その方法だって無いわけじゃない。人工授精とか、代理出産って手もある。たとえ俺の血は引いていなくても、篠宮さんの子だったら、俺は喜んで一緒に育てるよ」  突然聞かされた生々しい話に、篠宮はたじろいだ。自分は結城さえ居てくれれば幸せだ。そこに他人の介在する余地は無かった。 「結城、勘違いしないでくれ。私は別に子供が欲しいわけじゃない。君が自分の子供は要らないと言ってくれている事も、強がりやその場しのぎの言葉ではなく、真実だと思う」  どう言えば、恋人にこの気持ちが伝わるのか。それだけを考えながら、篠宮は追い立てられるように言葉を継いだ。 「君の気持ちを疑ってるわけじゃない。それに、私も……君が好きだ。もし私が結婚するなら、相手は君をおいて他にはいないと思う」 「じゃあ、どうして」 「それは……」  なぜと問われ、篠宮は返事に窮した。  どうして自分は、素直に彼のプロポーズを受けることができないのだろう。誰よりも自分を理解し、一生をかけて愛すると言ってくれた結城。もちろん自分だって、彼を深く愛している。その彼といつまでも一緒に暮らすことができたら、どんなに幸せだろうか。  そう思った瞬間、胸の中に何かが引っ掛かった。いつまでも。そう……いつまでも、だ。 「……それは」  なぜ自分が今まで結婚をためらっていたのか。その真の理由に、篠宮は初めて思い至った。

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