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見逃したらもったいない

「俺のも舐めて」  結城が顔の前に腰を突き出してくる。自分から顔を近づけ、篠宮は眼の前のものを恐る恐る口に含んだ。  軟らかいグミキャンディのような感触だったものが、軽く舌を這わせただけで、すぐに硬く熱をはらんでくるのが分かる。早くも先走りが滲んできたのだろうか。否応なしに劣情を誘う、少し塩気のある淫らな味がした。 「ああっ、いいよ篠宮さん。そこ気持ちいい……」  先端を舌先で舐め取るたび、結城が熱い吐息を洩らす。その声にさらに官能を刺激され、篠宮は両手で根元を包み込みながら夢中で奉仕した。 「あ、待ってヤバ……出ちゃう出ちゃう」  切羽詰まった声を上げ、結城が腰を引く。仕返しとばかりに根元から先端までを一気に舐め上げられ、篠宮は腰を大きく震わせた。 「あっ、馬鹿、や……」  身をくねらせながら抵抗してみるものの、ぬるぬるとした舌が何度も往復していく快感には耐えられない。思わず口を離し、篠宮は背をのけぞらせて甘い溜め息を洩らした。 「感度なら断然篠宮さんのほうが上だもんね。どっちが長持ちするか賭けたら、絶対に俺のほうが勝ちだよ」 「馬鹿、なに言って……ん、んんっ」  奥歯を噛み締めながら、必死に喘ぎを抑える。そのくぐもった響きに嗜虐心をそそられたのか、結城は微かに含み笑いを浮かべ、指の腹でそっと双丘の狭間に触れた。 「ひゃっ」  思わず妙な声をあげてしまい、篠宮は身をすくめて恥じ入った。湯でしっとりと温まった窄まりに指を這わされると、身体の奥がはしたなく彼を欲しがって蠢きだす。 「馬鹿、やめっ……そこは」  抗ってみせようにも、がっちりと腰を抱え込まれた状態では動くに動けない。身をくねらせて逃げようとしてみるものの、それは次第に、単に形だけの抵抗に過ぎないものになった。 「もうっ、篠宮さん。ちゃんと舐めて? お口がお留守になってるよ」  余裕たっぷりの小憎らしい台詞を吐き、結城が唾液で濡れた指を後孔に差し込んでくる。身体の力が一気に抜け、彼を受け入れるための準備をし始めたのが自分でも感じ取れた。 「はっ……反則だぞ。そっちまで弄るなんて」 「だってせっかく眼の前にあるんだもん。ついでに準備しておいたほうがいいでしょ?」  意地悪く呟きながら、結城が指先を抜き差しする。奉仕することなどすっかり忘れ、篠宮は眼を閉じて荒い息をついた。痛みや異物感よりも、与えられる快感のほうが遥かに大きい。 「あ、は……あっ」 「その声のほうが反則じゃん……見て、これ。その声聞くだけでこんなになっちゃったよ」  硬い棒のようなもので頰を叩かれ、篠宮は再び瞼を開けた。眼の前に、今さら確かめるまでもないほど熱く張り詰めた、結城の雄の証がそそり立っている。甘酸っぱいような不思議な香りに、腰の奥が甘く痺れるのを感じた。 「あ……」  篠宮の喉から、欲情に掠れた声が洩れる。舌を伸ばして口淫を再開しようとしたところで、結城が急に身体を起こした。 「ね、篠宮さん。もうローション使っていい……? 口の中も気持ちいいけど、やっぱりこっちに挿れたい……」  篠宮の返事を待たず、結城が棚の中から潤滑剤のボトルを取り出す。ぬるぬるとした中の液体を後孔に塗りつけられると、内側の粘膜が期待するように蠢いた。 「可愛い……ぴくぴくしてる。もう欲しいんだ? ちょっと待ってね。こうして指で広げて柔らかくしとかないと、俺の大事な篠宮さんが怪我しちゃうから」  優しい声で囁きながら、結城が何度も指を抜き差しする。丸みのあるしこりをそっと撫でられると、腰が勝手に揺れ始めた。 「感じる? ま、顔見れば一目瞭然だけど」  真っ直ぐな眼で見つめられ、篠宮は羞恥のあまり顔をそむけた。ベッドの上でみっともなく両脚を開き、こんな所に指を突き入れられて感じている。それは、相手が誰よりも愛しい恋人だからだ。これが他の人間だったなら、たとえどんなテクニックの持ち主であっても気持ち悪いだけだろう。 「あ、結城……電気を」  愛する人にこんな痴態を見られていることが、たまらなく恥ずかしい。ついに耐えきれなくなり、篠宮は眼に涙を溜めながら明かりを落とすよう懇願した。 「えー、駄目だよ。篠宮さんのこんな色っぽい顔、見逃したらもったいないもん。出張に行ってる間いつでも思い出せるように、しっかり眼に焼き付けておかなきゃ」  篠宮の頼みをすげなく断り、結城はさらに指の数を増やした。ローションが注ぎ足され、くちゅくちゅと濡れた音が響き渡る。 「去年の今頃はまだバージンだったのに、ほんとエッチな穴になっちゃったよね……ねえ篠宮さん。もう、ここ使わないと満足できないでしょ?」  内側を指の腹で擦られるたび、中の粘膜がもっと太く硬いものを求めて貪欲に蠢く。胸の突起が、触れられてもいないのに熱をもってぷっくりと立ち上がった。 「こっちも熟してきたね」  空いた手で胸に触れながら、結城がくちびるの端を上げて微笑む。腰がぴくりと震え、抗いきれない快感が身体の奥を侵食していった。

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