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第12話
図書館に行くまでの廊下は文化祭の準備で、とても賑わっていました。
私はその廊下を避けながら進んで行います。
この学校の校舎は六階建てで、一年生の階は六階と五階です。
私のクラスは六組なので五階の隅です。
体育館と体育館倉庫、運動部の部室、そして図書館は別棟にあり、階段を使って一階に降りなければなりません。
(名門私立とはいえ、校舎が古いと結構不便です)
一階までたどり着き、図書館までの廊下に出ました。
丁度そのときに、
「かーなえ」
……。
先程も聞いた声でしたが……少しだけ戸惑います。
家族以外下の名前で呼び捨ては初めてで少しだけ複雑な心境でした。
「……いきなり呼び捨てですか?」
「あれ?さっきまでのいい感じはどこ行った?!」
一気に親しくなったようで、私はどう反応していいのか分からない私はどうしたら良いのか分からなくて、呼び名にはとりあえず了承することにしました。
「別にいいですけど……」
今日は『特別』な天気の雨ですから。
「叶は文化祭の用意しないの?……もしかして、タラシ混んで免除とか!?」
そんなこと許されるはずはないですし、免除なんて仲間はずれみたいで嫌です……。
「違います。図書館で本を借りてから、本物の執事喫茶を体験しにクラスメイトの皆さんと行く予定なんです」
私は馬鹿正直に答えてしまいました。
この人には嘘が通用しないというか、私がこの人に嘘をつけないような気がするのです。
見抜かれる気がするんです……。
「ああ、じゃあウチのクラスのライバル一年クラスは叶のクラスなのか!」
……そういえば、昨日クラスで話題になってました……。
(そうです、私はそのとき杉原先輩のことを知ったんです)
昨日のことなのに、もっと前のような気がしてたけれど、違いました。
(他人のこと気にするなんて私らしくないです)
先輩はポンと手を打って言いました。
「よし!!じゃウチのクラスにも誘ってくる!!」
「……えっ?!」
「何事もフェアじゃなきゃズルいデショ!!叶はクラスの奴らと正門で待ってて。俺はクラスに話つけてくる」
そう言ってから、直ぐ廊下で文化祭準備をしている三年生の合間を器用に避けて走って行ってしまいました。
……杉原先輩は行動的で変わった人なんですね。
先程と同じ人ではないくらい明るい先輩でした。
喜怒哀楽が素直に出せる杉原先輩が、私はとても羨ましく思えてきました。
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