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第45話

「鈴木っ!!……叶、そこに居るな」 ドア越しに聞こえたのは、杉原先輩の声でした。 「すぎはらせんぱぃ!!たすけて……っ」 「杉原、どうした?」 鈴木先生は平然を装った声色です。 「鈴木、今すぐ内鍵を開けろ」 「嫌だと言ったらどうするの?」 鈴木先生は笑って言います。 「オマエが笹倉が好きだって校内にバラすわよ?」 「どうぞ?口説きやすくなって、かえって好都合デショ」 杉原先輩は軽い挑発には掛かりませんでした。 それでも……鈴木先生はまだ何かあるみたいでした。 「笹倉にオマエが私にしてきたことも話すけど?」 「それは、オマエが求めてきたからデショ。どうせガッコ側にはオマエが全部チクったし、もう効果は無いよ?」 「……笹倉に知られていいの?」 「いいよ。俺は叶に知られても諦めない覚悟だし」 鈴木先生は私の上から起き上がり、下着とズボンを元に戻してくれました。 「笹倉、隙を見せると私みたいなヤツに今日のようなことされるから。気を付けなさい」 そう言い残すと、そのまま更衣室の内鍵を開けてドアを開けます。 「『キスマーク』はもうちょと目立たないところに付けなさい……。逆に煽られるわ」 「……最後までしてないだろうな」 「キスしたら舌を噛まれた。こんなことアナタ以来ね」 そう二人は会話を交わし、次に更衣室に杉原先輩が更衣室に入ってきて内鍵を閉めました。 と、同時に先輩は私に駆け寄ってきてくれます。 「ああもう。何で今日の朝あれだけ鈴木には着いていくなって言ったのに。なんで罠に掛かってんのかな」 杉原先輩のそのいつもの声を聞いたら、安心して一気に目から雨粒が溢れ出てきます。 「ごめンなさぃ、うぐっ……こゎかっ……たれすぅっ」 『あー、俺のネクタイで手首縛るかな』と先輩は呟きながら拘束されていた手首のネクタイを外してくれました。 そして優しく抱きしめてくれた。 ポロポロと目から流れ落ちる雨粒は止る気配がありません。 「参ったな。啼かすのは上手いけど、慰めたりするのは苦手なんだ」 「……ぃいれす、せんぱいは……っそのままで」 「そーなの?でも……好きな子が泣いていたら慰めなくなるデショ」 慰めるのに特別な言葉なんて、私はいらないと思ってます。 ただ一緒にいてくれて、抱きしめてくれれば、私は何も要りません。 ……杉原先輩は片手で雨粒を拭ってくれました。 「俺は……怖くないよ?」 そしてネクタイで拘束された跡を見て、『辛かったね』と呟いてそこに唇を押しあてて、キスをくれました。 その行為に少しだけ笑ってしまって、私は泣き笑いなんて初めてしてしまいました。 「もう、……何で泣きながら笑ってるの?」 杉原先輩は困ったように笑います。何時もの杉原先輩です。 「先輩は結構キザなんですね」 「ちょっと叶。キザよりロマンチストって言って欲しいんだけど」 不満そうに笑う先輩に自分から抱きしめました。 「かなえ……?」 「杉原先輩。その、……何時も助けてくださってどうもありがとうございます」 自分から抱きしめて言うには、ちょっと照れてしまいました。 ですがこれなら顔を見られません。 ……面と向かって言えるような勇気は私にはまだないので、表情は隠したままにさせてください。 杉原先輩はそのまま抱きしめ返してくれました。 「助けが間に合って良かった。……でも、正直未遂も嫌なんだけどね」

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