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第55話

杉原先輩に連れていってもらったのは、確か笹倉グループに入っているメーカーの洋服店でした。 「あ、俊さん!いらっしゃいませ」 ……かなり丁寧な接客をされているので、私は先輩に小声で聞いてみました。 「先輩がいつも購入されているお店なんですか?」 「同じメーカーだけど、ブランド系列は違うよ。ちなみにこのメーカー部署で支社長を任されてるのが俺の親父なんだ。だから笹倉グループ傘下の系列でもある」 『なるほど、ですからこの丁寧な対応何ですか!!』と、私は今更ながら納得したのでした。 「今からでも自分の家の仕事がどのくらいの大きい企業なのかも、勉強しなよ?」 杉原先輩から、初めて『勉強』という言葉が出たのに驚いていたら、それも見透かされていました。 「俺はあのガッコでは落ちこぼれでも、一応偏差値はスンゴイ高いの忘れてるでしょ?」 ……忘れてました。 『先輩は、これだからエリートは……』と、表情のコロコロ変わる先輩が最近可愛いと思えるようになってきました。 店員さんが『何かお探しですか?』と聞いてきたので、私は真面目に『洋服です!!』と、答えたら杉原先輩が『この後輩は馬鹿じゃないから!!ちょーエリートすぎて、勉強しかしてない残念な子なだけだからね!』と、会話が凄く楽しくて、私は外出が楽しいことだとそう思いました。 『試着されますか?』と店員さんは選んだ服を持ってフィッティングルームに案内してくれようとしていましたが、杉原先輩は『明日着てくる時の楽しみが減るからダメ』と断りを入れていました。

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