「叶、所持金は？」 「？ないです」 その言葉に先輩は驚いた様子でした。 「現金じゃないの？！」 「はい、カードですけど」 「まさか名義人は……？」 「お父さんです」 「ダメダメダメ……絶対に使わないのでっ！！」 「何故ですか？」 私は『どうしてですか？何故ですか？』と疑問に思っていたら、 「笹倉の御曹司だってバレるデショ。俺が立て替えます！！」 お店を出たときに、私は杉原先輩に本当に悪いことをしたなと思ったので、 「今日の洋服の代金支払いますから、銀行口座教えてもらえますか？」 と私が言ったら、先輩はとても怒っていました。 「ダメ、叶には絶対に教えない！！」 杉原先輩は何故怒ってしまわれたのでしょう、私には理解が出来ませんでした。 「……叶、明日は現金で服代金、封筒に入れて持ってきて！！」 『これは社会勉強だよ！！』と念を押されました。 ようするに学生がカードを使うのがいけないのでしょう。 「はい」 「叶がそのカードを使えば『笹倉グループの御曹司』だって分かるのもんなんだよ？……そんなカードをここで使うのは、良くないこと」 「はい」 そうですね、私は先輩に圧倒されていました。 「あと、明日のデート代金は一万円、現金でお財布に入れて持ってきて。それ以上かかるデートはしないから」 『鞄は今日買った中にあるからね』と言われて、私は『分かりました』としか言えませんでした。 どうやら私は世間知らずだったらしく、そんな自分を恥ずかしく思いました。