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第57話
それから杉原先輩は私の自宅まで送り届けてくれました。
先輩は何故私の為にこんなに一生懸命になってくれるのかが理解が出来ませんでした。
ですが、正直に話したら『世間知らず』と言われて終わる、そんな気もしたのでやめておきました。
杉原先輩と並んで夜道を歩いていたら、
「ねぇ叶、聞いてもいい?」
沈黙を破ったのは先輩でした。
「何ですか?」
「今日みたいな『晴れ』でも『雨でも』ない日には、刺激を求めちゃイケナイの?」
「……それは」
それは私も思ってました。
ですが言い出す切っ掛けがなくて、諦めていました。
私は自宅の前に到着してから、先輩に視線を背けて言いました。
「杉原先輩、……来てください」
私は門を開けて中へ杉原先輩を招き入れると、亡くなったお祖母ちゃんが残した庭に案内しました。
「何かここ日本じゃないみたい。別世界だね」
先輩はこの庭に対しての感想を言いました。
「ここは普段、私と庭師くらいしか入らないので、……キスをしても見られないですし、見付からないと思います。ここなら、多分大丈夫です!!」
私は何故かとても緊張していました。
私は荷物を庭のベンチに置いてから、先輩はそのまま鞄を置くと、ぎゅっと抱きしめてくれました。
「叶はホントに、世間知らずだったね」
やはり言われてしまいました。
「先輩はキッチリしてましたね……」
あれでは『世間知らず』と言われても仕方がないと思いました。
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