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第63話
二軒目の映画館は一軒目の映画館よりレトロでした。
杉原先輩は『古くてイヤ?』と私に聞いてきましたが、古いというよりも本当にレトロで、何だか私の自宅のような雰囲気でした。
「私は先程の映画館よりこちらが好きです」
私は素直にそう感想を述べました。
「実は俺もこっちの映画館の方が好きなんだ。昔母親とよく来てた」
……先輩のお母さん。
「どんな人が聞いても大丈夫ですか、先輩のお母さん」
とても気になりました。
この、杉原 俊先輩を産んだお母さん。
「茶道の名家のお嬢様。俺はね、父親の愛人の息子なんだ」
……え?
「だから亮とは腹違いなんだ。似てないデショ?」
「あの、……ごめんなさい」
私はきっと嫌なことを聞いてしまったに違いありません。
「何で?俺気にしてなーい。それにオフクロは美人だし!!俺がイケメンに生まれたのは母親に似たからかなぁ?」
先輩は明るく言っていました。
ですが、きっと聞いてはいけなかったことです。
(私は、……嫌な奴です)
私は自己嫌悪でいっぱいな気持ちになりました。
「それより映画、観たいのあった?」
杉原先輩は本当に気にしていないみたいでした。
私は、先輩のことは全く知りません。
私は杉原 俊先輩の『悪い噂』のことばかり気にしていたのを改めて感じました
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