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第64話
「叶、気にしてるデショ?」
映画の物語が終わってエンドロールになってから杉原先輩が一番最初に口にした言葉はこれでした。
「あの犬、天国で先生と一緒にいられるようになって、……幸せですよね?」
私は確かに映画の内容は頭に入っていましたが、先輩の出生を聞いてしまって後悔していました。
先輩のことですから、私の内心は察しているんでしょう。
「あぁもう!!叶のナイーブ!!……でもそんなとこも大好きだし愛してる」
軽く唇を重ねてこられてしまいました。
「先輩っ、駄目です……!!」
「大丈夫だよ、一番後ろの席は俺たちだけだもーん」
叶が騒がなければね、と一言付け足されてしまいました。
確かに私は気にしています。
それは私が自分の出生についてが嫌なのもあったから。
私のお母さんも、もしかしたら私が生まれていなかったら、病気にならないで生きていたかもしれないからです。
「……私は本当に嫌な奴です」
まだエンドロールは終わっていないので、先輩にはこの言葉は聞こえないと思ってました。
「叶はどうしてそう思うの?」
先輩に聞こえていました。
でも答えられません。
答えてしまって、もし誤った道筋を進んでしまったら、杉原先輩が私と一緒にいなくないと感じてしまうかもしれないから、答えられませんでした。
私は杉原先輩に嫌われたくないんです。
なので私は聞こえていないふりをしました。
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