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第71話
(……居辛いです)
『小雪さん』は淹れてくれた日本茶を私の目の前ですすっています。
私は小さくなっていることしかできませんでした。
あの杉原先輩の『お母さん』です、……絶対に何かあります!!
「叶さん、会えて嬉しいわ。私貴方の事を聴いてからずっと会ってみたかったんです」
……あれ?
先程より態度が全く違います……。
「……あの子と態度が違うのが不思議かしら?」
まるで本当に心を読んでいるみたいで、この人は日本の神話等に出てくるような『サトリ』なのではないのかと、一瞬思ってしまいました。
「まぁ……確かにあの子には不憫な思いをさせてしまっているから……私もあのノリに乗ることにしているだけなんですけどね」
……不憫ですか?
「先輩は全く気にしてないって言ってましたけれど……」
そう、普通にいつものように笑って話していた杉原先輩はつい数分前に目にしたものでした。
「全く気にしてないはずがないです。愛人の子で、全くではないけれど……血の繋がらない家族と一緒に暮らしているんですから」
そうですね、と私は心の中で頷きました。
「だからあの子に『愛する人』が出来て私は『母親』として嬉しいの」
「……『母親』としてですか?」
『母親』、私にはよく分からない親子関係の家族関係の言葉でした。
「……あの」
「なんですか?」
私はその『母親』という言葉にも惹かれてしまい、つい聞いてしまっていました。
「『お母さん』ってどんな存在の人なのですか……?」
「叶さんのお母様は」
「私を生んで亡くなりました」
『小雪さん』に私はとんでもないことを言ってしまったしまったらしく、思い切り驚いたような顔色になってから、そしてとても優しい笑顔になりました。
その表情はとても懐かしいような穏やかで私は魅入ってしまいました。
「……そう。だから私に、『杉原 俊』の『母親』に会って、あんなに緊張していたのね」
すると『小雪さん』は私を優しく抱き締めてくれました。
杉原先輩が私にしてくるような熱い抱き締め方ではなくて……陽だまりのようなとても暖かく、優しく包み込むような抱き締め方でした……。
「これが『お母さん』よ」
『小雪さん』は穏やかな言葉で言いました。
私は、それを知っていました。
(……お祖母ちゃんは『お母さん』でもあったんですね)
それに気付いた途端に私の目には大量の雨粒が溢れだしました。
「あらあら……叶さん、泣かせてしまったわね。どうかしましたか?『お母さん』に辛いこと吐き出してしまえば安心するから大丈夫よ」
(お母さん……)
「『小雪さん』……っ」
「『お母さん』でいいのよ。泣かないで……叶さん」
まるで幼い子をあやすように、頭や背中を撫でられて私はとても安心してしまいました。
それで私は………杉原先輩からのあれほど押された念を忘れてしまい、『小雪さん』に包み隠さず……私のことも悩み事も、私が知っている杉原先輩のことも、すべて話してしまいました。
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