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第72話
「お互いを利用して、そんな関係を作るなんて……」
小雪さんは杉原先輩と私の最初の関係に呆れていました。
「……はい」
今冷静に考えると、とんでもない理由だったと思いました。
先輩が告白してくれなかったら、そのとんでもない理由のままだったのですから。
「俊さんが告白しているのなら悩むことはないです。そのまま突き進んでください」
「……え?でも」
「大丈夫です、叶さんは今ちゃんと恋愛しています」
私はてっきり話を聞いてくれるだけで、助言をくれるとは思ってもみませんでした。
驚いてしまったと同時に、私なんかが頼ってしまって良かったのだろうかと思いました。
「ですが、私はウジウジ悩んでばかり、先輩を困らせています。……小雪さん、杉原先輩はどうして私という『男』を好きだなんて思ってしまったんでしょう」
その言葉に、小雪さんは一瞬間が間が出来てしまいました。
ですがそのあと、真面目な表情で話はじめました。
「叶さん、この世に『性別』はいくつある思います?」
私は少しだけ考えてから……、
「この世には性が番が出来てから性別が決まる生物もいますが、とりあえず『男』と『女』だけだと思います」
私のその言葉に小雪さんは吹き出して笑った。
「……真面目な答えでビックリしてしまいました」
その表情が杉原先輩と重なり、私は思いました。
(やはりこの人は……やはり先輩の『お母さん』なんですね)
今更になって気が付いてしまいました。
小雪さんは、杉原先輩と似ています。
先程この家の裏から手招きしていた時に誰かに似ていると思っていましたが、杉原先輩がいつも私にしてくれる、あの『叶、おいで』に似ていたんです。
「性別は『男』と『女』しかいないなら、別に同じ性別の人を好きになっても少しもおかしくない、って叶さんは思わないかしら?」
その言葉に私に私は驚きました。
確かにそうです。
……この世には『男』と『女』という性別しかいないんです。
ですが、……それでも。
「ですが私も先輩が好きだったとしても、……先輩が言う『愛』の好きだと、そう感じても形は残せないです」
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