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第74話
……知りませんでした、杉原先輩はこの家を継ぐことを。
小雪さんは私をもてなすためにと、とびきりの茶菓子を買ってきると出掛けて行ってしまいました。
(そんなに気遣ってくれなくても大丈夫名のですが……)
小雪さんは杉原先輩は茶室にいると言っていたので、確か『茶室』というものは離で小さな建物だと聞き、とりあえずは知識にはあったので、それらしい建物を覗きに行くことにしました。
それに小雪さんは『着物』という言葉を口にしていました。
着物を着た杉原先輩も見てみたかったですし……。
ですが……。
(あれ……?)
『茶室』らしい建物を見付けたのですが、入り口が見つからないんです。
私はオロオロと建物の回りを見歩いて見ましたが……扉は見つかりませんでした。
すると『茶室』の小さな下の方についた木の襖のような扉?が開いて
「叶?」
杉原先輩が顔を出してくれました。
雨の日の杉原先輩のような髪型で、私は少しだけ心臓が一瞬高鳴ります。
「どした?」
何故か着物姿の先輩が見たかったとは正直に言えなくて……。
「『茶室』が気になってしまって……」
「見てみたくて、うろうろ歩いてたの?」
「どうして気付いたんですか?!」
私は先輩に歩み寄り、今度は魅取れてし舞いました。
(……着物姿の……杉原先輩です)
洋服の杉原先輩も素敵なのですが、着物姿の杉原先輩は艶があるというか、どう表現していいのか分かりませんでしたが、朝見た私服杉原先輩同様に新鮮でした。
「砂利の音が聞こえてた。小雪さんがあんなにうろうろするわけないデショ?」
『おいで』と言われて……ようやく『茶室』の入り口がここなのだと分かりました。
長身で体が私より大きい先輩がここから出入りしていると思ったら、とても可愛く感じました。
私は靴を脱ぎ、『お邪魔します』と入ると、まるで別世界でした。
純日本の箱部屋、といった感じでしょうか。
とても素敵なお部屋でした。
「杉原先輩、素敵ですね……」
「着物姿の俺が?茶室が?どっち」
「どちらもです!!」
つい私は即答してしまいました。
「え……?」
私はその先輩の反応に気付いて我に返れました。
「あ……あっその、『茶室』も素敵ですけど.着物の先輩も素敵です!!」
「なぁに、その可愛い反応は?」
また杉原先輩に押し倒されてしまいました。
私は本当にひ弱な人間ですね、と自己嫌悪していると、
「小雪さんに何を聞かれたの?」
……あ。
大変です!!
「聞かれたのではなく.私自ら話してしまいました」
ごめんなさい、と謝る私に杉原先輩はにっこり笑ってます。
「先輩のいうこと聞かないイケナイ叶には、お仕置きかな?」
「お仕置きですか……?」
私の血の気が下がってきます……。
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