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【鈴蘭の間】3
小粋が零次の肉厚な下唇に、がり、と噛み付いたのは四度目の拙い接吻で唇が重なった瞬間だった。
つまらないキス。
欲求不満で苛立つ小粋を更に煽るには十分過ぎた。
それに対して零次は、眉根を寄せながらも、右胸の突起にぶら下がるリングに指を掛けて引っ張り上げる。
──……ちりん、
「っん、!」
ピアスが通った内側から先端に掛けて、ツン、とした痛みと共に甘い疼きが響く。
だが、小粋は決して捉えた零次の唇を離さない。
それどころか、すり潰すようにごりごりと顎を小さく前後に動かして、徐々に噛む力を強めていく。
すると、零次が負けじとリングが引っ張り上げて、大きく揺さ振る。
根こそぎ抉り取られる、そう錯覚する程の熱を帯びた痛みが差し込むのは瞬間的で、続く余韻は重く、甘い疼き。
ちり、ちりん。
「ン゙ン、っン──!」
ぶつ、っ──。
鈴の音が連続して鳴るのに紛れて、肉を裂く音と感触が小粋の顎に伝わった。
じわ、と溢れる零次の血が舌先まで流れて漸く唇を逃がすと、リングからも指が離れる。
「ッ、てぇ」
「へたくそでつまんないキスなら、されない方がマシなんだけど」
「だったら、とびっきりの手本をどうぞ」
目を開けてじとりと零次を睨むと、ギラついた眼差しが同じく小粋を睨みつけていた。
端正な顔を造り上げるパーツの1つに傷をつけた、それに対する仕置きがある筈だ、それだけで小粋はゾクゾクとした興奮を覚える。
赤く濡れた唇からは今にも鮮血が滴り落ちんとしている。それが花蜜にさえ見えてしまう。それ程までに興奮している、飢えている。
挑発すれば、ぐうの音も出ない程の嫌味が返ってくる、それも至極────楽しい。
小粋より零次の方が一枚も二枚も上手だ。頭もキレる。
煽っても抗っても、小粋如きでは到底勝てそうにもない。
小粋だって、そんな事は最初から分かっている。
零次の視線には、絶対王者ならではの圧倒的プレッシャーが乗っている。
しかし、まだ序の口だ。まだ小粋に対して限りない容赦がある。余裕に満ち溢れている。
加減なく、そして容赦なく嬲られたい、……───マゾフィスト、そして、絶対的敗者として。
ぐ、と頭を持ち上げ、やや垂れ流れる赤い蜜をゆっくり、そしてねっとりと舐め上げる。
目を伏せて口唇を割るように舌を伸ばすと、待ち構えていた零次の舌が容易く主導権を奪い、じゅ、と吸い上げた。
「ンン、ぅ──っ、ん、!」
小粋が深く舌を差し込んで上顎を掬うと、零次は裏筋をぞろりと撫でるように何度も擽る。
逃れる為に舌を引こうとすれば、許さないと言わんばかりに強く吸い上げられて元の位置へと引き戻される。
「っ、んんン、ン、っ、……ん、んっ、」
かと思えば、今度は押し戻されて零次の口内を追い出された上に、小粋の方へと侵入した零次の其が好き勝手に口内を貪り始める。
それと同時に髪を掬い耳を撫でた手が後頭部へと回り、頭を支えて小粋の負担を和らげた。
歯列をなぞった後で、ざらついた舌下に侵入し、愛撫を始めた零次を、小粋は只管追うしか出来ない。
───くそ、上手い。蕩ける。
たかがキス如きで、呼吸をする事さえ忘れさせる。夢中にさせる。虜にする。
意識が甘く歪み始めたところで、零次は愛撫さながらのディープキスを終えた。
「っ、ッは───、ぁ」
「まだキスしかしてねぇよ」
嗚呼、コイツまだ余裕だ、と思いながらも言葉が出ず、深く息を吸いながら零次の手を枕に敷く。
一旦落ち着きたい。
そう思った筈が、再び零次に口を塞がれ目を見開く。
その刹那、するりと頭の下から抜き取られた零次の手が腰を撫で滑った。
「ッ、────!」
ぞわりと鳥肌が立ち、零次が触れた所から寒気に似た感覚が脳天へと向かって駆け上がる。
それでも止まらない手は、時折縄を引っ掛けながらも順路を辿る様に極々自然に屹立した小粋自身へと辿り着く。
その間も、口内への愛撫は止まらない。下半身へと意識が逸れた所為でもつれる舌を弄ぶ。
「っ、ンっ、ン゙ンんッ、!」
先程とは打って変わって優しく程好い力加減で根元を包み、先端までゆっくり扱き上げる。
勿論、ピアスの凹凸を掠めるのも忘れない。
「ン、ふ、っん゙ン゙───っ」
先走りを纏った指で、ぐちぐちと音を立てて尿道口を執拗に捏ね繰り回す。
もう随分と長い間お預けを食らっていた所為で、吐精感が押し寄せるのを押し戻せない。
──りん、ちり、ちりん。
下腹部に力を込めて必死に堪えると、跳ねる肉棒が鈴を鳴らす。
それに気を好くしたのか、改めて肉棒を握った零次がリズム良く肉棒全体を扱き始める。
「ンンんン゙……──ッふ、ん゙!ンう、っ!」
小粋の視界は何度も明滅した。
目を伏せた先の暗闇の中で、何度も小さな光が破裂する。暗闇に戻るかと思いきやまた光が破裂してクラクラする。
それさえ見越した様に、絶頂に向かわせる零次の手が速度を増していく。
「んンンンん、ッ──ン゙ッ──、……ッん゙、ンンン゙ンうううぅッ!」
「ッ、ン」
思わず手近にあったシーツを握り締め、目前まで迫る絶頂を拒む。
だが、留めとばかりにぐりっと裏筋のピアスが押し込まれた瞬間、内から熱い欲がせり上がり、塞がれていた唇が解放された。
「あ゙ッ、あぁあ、ッあ、……、くッ、そ、待っ、あ、っあ、あ゙、イッ、っ──イッ……く、ぅ────ッぁ!」
どぷり、と溢れた後も暫くどぷどぷと脈打つ様に溢れた白濁が小粋の腹を汚す。
平均より長い吐精、そして量も多い。
つまり、抑制効果が随分と薄れてしまっている事を示唆していた。
それを察し、零次は諸目を細める。
さあ、愈々だ。
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