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第11話 見えない鎖 <窮地> 2

「パスワードがわからないから、出来ないだろうとか思ってます? 残念。白根さん、一番上の引き出しにパスワード書いた紙、保存してんの知ってるんですよね、僕」  んふふっと、抹樹は楽しそうに笑みを零した。  やっていることは、下劣極まりないのに、抹樹は爽やかに笑みを零す。 「パスワード、会社で管理されてるから、白根さんの一存で、変えられないしね。会社のどのパソコン使っても、白根さんの発信で送れちゃうよ」  抹樹は、こてんと首を傾げ、どうしますか? と俺を追い込む。  俺に、逆らうと言う選択肢は、残されていなかった。  くてんと股間で萎える抹樹のペニスに…、顔を寄せた。  噎せながらも懸命に奉仕する俺に、抹樹のペニスが硬く勃ち上がってくる。 「机の下、入って…」  片足で、ガッと腰を蹴飛ばされた。  反動に咥えていた勃起した抹樹のペニスが、ずるりと抜け出る。  唾液とカウパーの混ざりあった液体が、抹樹のペニスと俺の口の間に粘っこい糸を引いた。  ぺちょっと顎に張り付く感覚に寒気が背を這った。  グッと手の甲で拭い、睨み付けるような瞳で見上げた。 「ね、早く入ってくださいよっ」  もう一度、振り上げられる足に、ずるずると腰を引きずるように、机の下に身を埋めた。  とはいっても、大の大人。  尻と胸の半分ほどしか埋まらない。  ケツに当たったのは、俺の向かいに座る女物の机の衝立。  男性用の机は、机を支える4本の脚しかないのに対し、女物の机は、足が見えないように、3方を引き出しと薄い鉄板で囲まれていた。  近場の椅子を引き、どかりと腰を落とした抹樹の瞳が俺に向く。 「ま、仕方ないか…」  ぼそっと声を漏らした抹樹は、ガチガチに勃起したペニスを俺の口許へと寄せた。  俺の唾液と抹樹のカウパーが、蛍光灯の光を乱反射する。 「ほら。続けて下さいよ」  抹樹は、楽しそうに真っ黒な笑顔を俺に向ける。  仕方なしに口を開き、再び、それを咥え込む。  じゅっぷじゅっぷと立つ音に、プライドも、…何もかにもが、崩れ去っていく。  どうにでもなれ…。  投げ遣りな心と一緒に、懸命にしゃぶる。  ガチャンッと扉の開く音が聞こえ、動きを止めた。  ドッドッドッ……。  心臓の音が、耳の奥で、こだまする。  プライドなんて崩れ去って無くなったと思っていたのに。  それは、こいつに対するプライドであって。  誰彼構わずに、こんな醜態を曝したいなどと思っている筈もなくて。  背中を冷たい汗が流れていった。 「まだ、お仕事ですか?」  少し大きな音で、掛けられた声の主は、ビルの守衛のようだった。 「ングッ………」  ぐっ押し込まれるペニスに、喉奥を突かれ、吐き気が上る。  睨みつける俺の瞳に映るのは、ドアに向ける抹樹の緩い笑み。 「えぇ、もう少し。後1時間くらいで帰ります」 「そうですか。戸締まり、忘れないでくださいね」 「はい。すいません」  交わされる会話の最中にも、守衛にわからない程度に、抹樹の腰は、揺らめいていた。  喉奥に擦り付けるように揺すられるペニスに、吐き気と屈辱に悶える胸が、ムカムカしていた。  守衛が去ったのを確認した抹樹が、椅子を引く。  俺の髪を無造作に掴み、椅子と供に、俺をも机の下から引きずり出した。  俺の髪に指を絡め、抹樹は、ふふっと笑った。 「興奮しました?」  蔑むような嘲りの瞳が、俺を見やる。  首を傾げ、睨め上げる。  でも、口に咥えるペニスに、瞳を占める涙に、俺の威圧感は皆無に等しい。 「興奮なんてしてないって顔ですね。でもさ、白根さん…、勃起、してんじゃん」  彼の革靴が、俺のペニスの先端を嬲った。 「ンッ………くっ……」  認めたくない。認めたくないのに。  身体は素直に反応し、欲情を…示していた。  男のモノをくわえ、守衛に見つかるかもしれないスリルを味わう。  その、屈辱的な状況に、俺は、……興奮、していた。

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