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第14話 現実の鎖 <準備> 2
「んっ…ぁっ………」
快感の波に飲まれぬように、振るう首に、後ろから回された抹樹の指は、俺の喉仏を滑り降りる。
「覚えてくれました? 僕の形……」
背中から、くすくすと鳴る抹樹の笑う音に、ぞわりとした寒気が背を伝う。
立ったままに、後ろから、アナルを嬲られる。
つつっと滑る指は、抹樹のペニスを咥え込むアナルの縁をなぞり、嫌でも、その事実を俺に知らしめる。
「僕は覚えましたよ。ココ、…好きですよね」
ぐりっと前立腺を抉るように突き上げられ、ビリビリとした感覚が、アナルから全身へと駆け巡る。
「ぃっ………ぁあっンッく…」
艶めく音が漏れる唇。
……感じている自分に嫌悪する。
加齢により、腹につくほど反り返りはしないものの、硬くなり勃ち上がっているのは、興奮の証。
でもこれは、与えられた薬のせい。
抹樹の愛撫に、感じているから…じゃ、ない。
硝子に縋りつく身体が、膝から頽れそうになる。
「やらしいですね…腰、揺れてますよ。そんなにお尻、気持ちいいんですか?」
嘲笑う抹樹の声と、撫ぜ上げられる尻。
はぁはぁと荒い息を吐きながら、揺蕩う腰も、零れる吐息も、何もかにもを誤魔化すように、俺は、ぐっと唇を噛み込んだ。
「んぁっ……………っ」
ぐっと奥を穿たれる感覚に、噛み込んだ唇が外れ、背が仰け反る。
―― カシャッ
背後から鳴る音に、俺は慌て、振り返る。
「夜景…、綺麗だなと思って」
スマートフォンを手に、ふふっと柔らかく笑う抹樹の声色は、下腹部から聞こえる粘着質な水音とは、似ても似つかない色を浮かべる。
笑みを浮かべる抹樹の様子に、嫌気が差す。
ここは12階。
周りに、このビルほど高い建物はないが、事務所が建ち並ぶ一帯は、夜になっても、暗闇に包まれることはなかった。
「でも、夜景って写真に上手く、映らないですよね……」
残念そうな声を放ち、ほら…そう言って、目の前に翳されたスマートフォンの中には、硝子に反射する俺の痴態……。
下がる眉尻に潤んだ縋るような瞳。
だらしなく開いた口からは、涎が滴り落ちていた。
そんな自分の姿に、かぁっと頬が、熱く染まった。
「自分のやらしい顔に、興奮しちゃいました?」
慌て背ける視線に、抹樹は、可笑しそうに、くすくすと笑った。
「せっかくだし…、いろんな人に、白根さんのやらしい姿、見てもらいましょうか」
遊びを楽しむ子供のような声を放つ抹樹。
逸らした瞳を戻し、肩越しに睨みつけるように、振り返ろうとした。
瞬間、右の膝裏に当てられた抹樹の手により、足をぐっと持ち上げられる。
「ぅっ………ぁっ…」
迫り出す腰に、勃ち上がる俺のペニスが硝子を撫ぜた。
溢れ出していたカウパーが、硝子に、べっとりと貼りついた。
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