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第21話 現実の鎖 <映画館> 2
…………本当に、苦痛…、なのか?
ふと過る疑問に、心臓がドクリと音を立てる。
心の中で、大きく首を振るった。
―― バンッ
音に驚き、持ち上げた俺の瞳に映ったのは、閉められた扉。
ちょろっと小便が出た瞬間に、抹樹が、いきなり扉を閉めたのだ。
「白根さん、鍵、閉めて下さい…」
静かに放たれる抹樹の声。
俺は、急に扉を閉められ、きょとんとしていた。
「閉めろっ」
動かない俺に、短く鋭い抹樹の声が放たれた。
俺は慌て、閉じられた扉に鍵をかけた。
「でよぉ~、俺言ったんだよぉ…」
鍵をかけて直ぐに、抹樹以外の声が聞こえてきた。
ぱったん、ぱったん、とだらしなく歩く足音が2つ、3つ、響く。
人が入ってきたから、抹樹は、扉を閉めたのだと気がついた。
閉められた扉に、閉鎖された空間に、身体の力が抜けた。
出そうと必死になってした小便は、勝手に排出されていた。
人に見せてやろうと言うクセに、実際に人が来たら俺を隠す。
それはきっと、言葉で俺を煽っているだけ。
あの写真だって実は、全社メールで流す気なんかない。
……そんな気さえする。
入ってきた奴らが出ていった雰囲気に、コンッと扉が叩かれる。
抹樹の嫌がらせは、言葉だけのもの……。
そう思っても、俺は、抹樹に逆らえなく…、なっていた。
「開けて下さい」
抹樹の声に、素直に鍵を解錠した。
扉の隙間から見える抹樹の顔は、いつものように微笑んでいた。
きぃっと音を立てて開く扉に俺は、ジーンズも下着も、足首まで下げたままだった。
「オシッコ、出ました?」
子供にでも問うような物言いに、くっと顔が歪んだ。
「終わったんなら、早く出て下さいよ」
首を捻る抹樹に、俺は、ゆっくりとジーンズと下着に手を伸ばす。
膝辺りまで持ち上げたジーンズに、抹樹の、くすくすと笑う声が響いた。
「何か…、期待してます?」
嘲笑うような音を立て言葉を放つ抹樹に、屈辱に歪む視線を向ける。
俺のペニスは、また、頭を擡げ始めていた。
「何もしないって言ったらどうします?」
抹樹は、楽しそうに言葉を紡ぐ。
「……どうもしない」
投げ捨てるように紡いだ俺の言葉。
立ち上がり、下着とジーンズを上げようとする俺の手が、腿の途中で、抹樹に押し止められた。
空いている手で、つつっと頬に指を滑らせた抹樹は、やたらと色気のある瞳を俺に向けた。
「嘘。………物足りない、…でしょ?」
上から目線の言葉を零した抹樹は、俺の露出されているペニスに、指を絡める。
抹樹の綺麗な長い指が纏わる感触に、どくんっと心臓が大きく脈を打つ。
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