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第22話 現実の鎖 <映画館> 3
抹樹は、鼻歌でも歌い出しそうなほど、上機嫌に微笑んだ。
背負っているボディバックを身体の前へと回し、中を探る。
「白根さんのそんなご要望にお答えして…」
抹樹の言葉に、俺は慌て、声を荒げた。
「誰も期待なんてしていないっ。物足りなくもなっ……」
早口に言葉を紡ぎ、きゅっと眉根を寄せる俺。
抹樹は、楽しそうに俺の唇に人差し指を押し当てた。
黙れ…と、言うように。
鞄の中から、するりと出てきた抹樹の手には、ピンク色の卵形のローターと、コンドーム……。
コンドームの袋の端を咥え、ぴりっと器用に開けた抹樹は、ローターに、それを被せた。
それをどうする気なのかは、一目瞭然で。
正面から俺の身体を抱き締めるように、後ろから回された抹樹の手が、尻をぐにっと掴んだ。
「白根さんに、拒否権はないって言ってるじゃないですか」
耳元で囁き、ふふっと嘲笑うような音を立てた抹樹は、コンドームに包まれたローターを俺のアナルへと宛がった。
俺は、ぐっと唇を噛みしめる。
ぐにゅりとした感触を伴い、ローターが俺のアナルの中へと埋められた。
ローターと供に入ってきた抹樹の指が、探るようにそれを蠢かす。
「ンッ…………くっ…」
前立腺に触れる位置にローターを押し止めた抹樹の指が、ずるりと抜け出した。
振動が加えられていない、ただ単なる固形物の感触。
それにすら俺の身体は、反応した。
俺を解放した抹樹は、再びボディバックを漁る。
取り出された抹樹の手には、小さなケースが握られている。
「だらしないお口には、蓋をしないといけませんよね」
訝しげに見やる俺に、抹樹は、満面の笑みを顔に湛える。
再び抹樹の手が、俺のペニスに絡みついた。
「ンッ…………はっ…」
無造作に、荒く、何度か扱かれた俺のペニスは、ぐっと硬さを増した。
とろりと湧き出すカウパーに、抹樹の指が、俺の尿道口を押し開く。
片手で器用にケースを開けた抹樹は、中からリングのついた短く細い棒を取り出した。
「お漏らししないように、塞いでおいてあげますね」
抹樹は、酷く楽しそうに言葉を紡ぐ。
ぐにゅっと尿道を押し開かれる。
背中を、ぞわりとした感触が駆け上がる。
つぷっと入り込んでくる感覚に、気持ち悪さが胸を衝く。
俺は思わず、抹樹の肩に両手をつき、身体を支えた。
「ぅっ…………」
小さく漏らす声に、抹樹の瞳が、ちらりと俺を見やる。
「慣れたら、気持ちいいらしいですよ」
くすくすとした笑みを零しながら、抹樹は、さらにプラグを俺の尿道へと沈めた。
俺のペニスからは、リングだけが顔を出す。
細く短い棒は、俺の尿道に、飲み込まれていた。
プラグを飲み込む尿道口を、するりと撫ぜた抹樹は、リングをペニスのカリ首へと引っかけた。
そのまま腿の途中で止まっていた下着を履かされ、ジーンズも直された。
アナルから垂れるコードの先、ぶら下がっていたリモコンは、持ち上げられ、ジーンズのウエストを越えて、ポケットの中へと入れられた。
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