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第26話 現実の鎖 <映画館> 7

「ぅっ…………はっ…ぁ………」  顎を捉えていた抹樹の手が、下腹部へと遷移する。  勃ち上がり天井を指していたペニスが、便器へと向けられた。 「抜きますよ……」  ドクン、ドクン、と心臓が高鳴っていた。  言い知れぬ恐怖と、訪れるであろう快感に、胸の中が、ぐちゃぐちゃと混ぜられている気分だった。  ずるっと抜け出る感触に引きずられるように、びしゃっと精液が吹き出した。 「ンッくっ………」  思わず両手で口を覆い、声を殺す。  ビリビリと走る快感が下肢を揺らした。  揺らぐ腰に、抹樹の手がペニスを擦る。  溜め込まれた精液は、だらだらと中途半端に流れ出る。  プラグを抜いた抹樹の手が、俺の腰を支え、下腹部にぴたりと添えられる。  親指で強めに押さえ、ペニスに向かい撫でられる。  ぐぐっと圧迫される感触に尿意が這い上がった。 「やめっ……、んっ……………ンッ…」  開かれた尿道で、それを我慢するのは、不可能だった。  じょばばばっと激しい音を立て、小便が勢いよく、吐き出された。  子供のようにペニスを持たれ、排尿させられる。 「すごい勢い…」  くくっと詰まるように聞こえる抹樹の笑う声に、かぁっと顔が、赤く染まった。  腹の中の振動は止められた。  でも、ローターそのものは、俺の中に入ったまま。  映画館から連れ出され、解放されるものと思っていた俺は、改札へと足を向ける。  瞬間、抹樹の手が俺の腕を掴んだ。 「帰しませんよ……?」  俺の行動が、おかしいと言わんばかりの口振りで言葉を放つ抹樹。  俺は、顰めた顔を向ける。 「今日は夜まで付き合ってもらいます」  怖いぐらいに綺麗に微笑まれ、俺は言葉を失った。

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