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第43話 外せない鎖 <逃亡拒否> 3~ Side S

 怒り昂る感情のままに、俺は、抹樹にキス、していた。  勝手に好きになり、姑息な方法で俺を手中に納め、勝手に失恋しやがった。  抹樹の本心に、俺は、怒りを感じていた。  ソファーへと押し倒された俺。 「心臓、……壊れそう」  ぼそりと声を零した抹樹の手が、俺の手首を掴んだ。  導かれたそこは、抹樹の胸。  指先に響く抹樹の心音。  ドッドッドッ……っと、少し早めに、強く、脈を打つ。  柔らかくもないその胸に、触れる指先に、熱を感じた。  下着しか身に付けていない抹樹の素肌に触れた。  抹樹とのセックスは、いつも会社や屋外で。  抹樹は、ほとんど着衣を乱さなかった。  初めて触れる抹樹の肌に、指先が、びりびりと痺れたような感触を覚えた。  女のように柔らかくもなく、抱き心地が良いはずもない。  でも、触れる感触に、感じる温もりに、心が、どこか安堵する。  俺に被さるように身体を寄せた抹樹は、小さく啄むようなキスを落とした。  何度となく繰り返したバードキスの後、俺の唇を食べてしまおうとするように、淡く歯を立てた。  溺れるように、キス繰り返す抹樹に、応えるように、唇を開く。  ふわりと離れた抹樹の唇。 「これ…、邪魔……」  抹樹は、俺の眼鏡に手をかけ、するりと外し、ローテーブルの上へと置いた。  眼鏡の痕がついている、鼻筋に、優しく唇をつけた。 「はぁ…、嬉しいな」  ふふっと小さく笑みを漏らす抹樹。  シャツの裾から忍び込ませた手で、存在を確かめるように、俺の肌に指を滑らせる。  触れる感触に、心が跳ねた。  ふと、抹樹の手が、俺の頬に触れる。 「白根さんも、ドキドキしてるんですか?」  赤らんだ俺の頬に触れながら、抹樹は柔らかく笑った。  見つめていることに堪えられなくなったように、抹樹は再び、唇を落とす。

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