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第44話 外せない鎖 <逃亡拒否> 4

 抹樹に虐げられるコトに、苛立ちはあるのに、心の隅で歓喜している。  恥ずかしがる俺を見て、嬉しそうに笑う抹樹に、胸の底が熱くなる。  徐々に激しさを増す口づけに、くちゅっ…ぴちゃん……と鳴る小さな水音に、耳から脳が焼かれている気がした。 「はぁ………、ねぇ、白根さん……」  キスの隙間に、熱を伴う荒い息を吐きながら、抹樹が言葉を紡ぐ。  薄く開いた瞳で捉えた抹樹の顔は、余裕のない雄の色香を漂わせていた。 「気持ち……、いぃ?」  はむっと俺の下唇を食みながら、抹樹が途切れた声を放つ。  言葉にすることに羞恥を感じる俺は、抹樹と同じことをする。  甘く柔く、抹樹の唇を、食む。  ふわりと顔を離した抹樹は、ふふっと小さく笑った。 「それは、気持ちいいってコト、ですか?」  柔らかく楽しげに笑みながら、抹樹の指が俺の唇に触れた。 「この口で、ちゃんと……言って?」  指を挟み込んだままに、抹樹はまた、キスをする。  恥ずかしさから、瞳を逸らせた。  抹樹は、諦めたように、ははっと小さく笑った。 「僕は、気持ちいいです。……好きです、白根さん」  触れずに居ることが堪えられないというように、抹樹は俺に口づける。  目の前の俺の存在を確かめるように、するすると頬や身体を撫で擦った。  抹樹の″好き″という言葉に、胸の奥が焦がされた。  ……俺も、きっと、……好きだ。 「ごめん、なさい…。勃っちゃいました……」  ふわりと身体を起こした抹樹は、自分の股間を、戒めるように、きゅっと握った。 「……シたい、な」  我慢が効かない子供のように、抹樹は、熱い声を漏らした。  べろりと舐め上げられる首筋に、ぞくぞくそした痺れが走り、俺の身体を熱らせた。  抹樹は、昂る感情のままに俺のネクタイに手を掛ける。  荒く緩めたそれを、勢いのままに引き抜いた。  シャツの裾から、再び挿し込まれた抹樹の手が、俺の身体の上を滑っていく。  抹樹の頭を両手で掴み、顔を上げさせ、無言で、口を開けた。  いつもの、あの薬を欲するように。  歳を取った俺の身体じゃ、昇るコトも、達するコトも、簡単じゃない。  薬の力でも借りて、身体の熱を上げたかった。  抹樹は、開いた俺の口に、キスを落とす。  舌を忍び込ませ、俺の口腔内を愛撫する。

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