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第50話 外せない鎖 <逃亡拒否> 10
俺たちは、初めてまともなセックスをした。
そのまま落ちてしまった抹樹が、隣で眠っていた。
先に目覚めた俺は、上半身を起し、ぼんやりと眠る抹樹の顔を眺める。
なにも身につけていない裸体の格好で、うつ伏せに、枕に頬を預け眠っている。
スヤスヤと眠る顔は、穏やかで、幸せそうな笑みを零す。
こんな顔も出来るのに。
どうしてあんな卑怯なことをしたのか…。
あんな真っ暗な笑みを浮かべて、俺を虐げたのか…。
でも、最初から、素直に告白されていたとしたら、俺は、抹樹を受け入れることは出来なかっただろう。
世間の常識に囚われ、気持ち悪いと嫌悪し、遠ざけるだけ、だっただろう。
高校生に嬲られ、抹樹に虐げられ、やっと俺は、自分の本性を知ったのだ。
俺たちには、この始まりが正しかったのだと、認める他、…ない。
ふっと瞼を押し上げた、ぼんやりとした抹樹の瞳が俺を捉えた。
俺の姿に、抹樹の顔は、いつもの笑みを湛えた。
「好きなコ虐めたいとか…お前、小学生並だな?」
乱れ瞳にかかる抹樹の髪を、無造作に掻き上げた。
「そんな俺に、虐められて感じてたの…誰ですか? 小学生に虐げられるって…それじゃ、白根さんは幼稚園生ですね」
触れる俺の手に、されるがままになりながら、抹樹は緩く、ははっと笑う声を漏らす。
「くっそ…。お前の恥ずかしい写真、ばら蒔くぞっ」
抹樹のスマートフォンに手を伸ばす俺に、しれっとした声が返る。
「いいですよ。僕、変態なんで。気にしないです。僕の恥ずかしい写真…もれなく白根さんの痴態もばら蒔くことになりますよね?」
ごろっと寝返りを打ち仰向けになった抹樹は、ちらりと俺に視線を向け、楽しそうにクスクスと笑う。
「ぅぐっ…」
抹樹の言葉に俺は、言葉を詰まらせた。
18も下のこの男に、俺は一生、勝てる気がしない…。
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