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第58話 ちぎりたい鎖 <暴露> 8~ Side K

 仲の悪い両親は、喧嘩ばかりだった。  ギスギスとする空気の中、オレが頼れるのは、兄だけだった。  その兄が、少し変わっていようとも、少し壊れていようとも。  兄以外に頼れる人は、存在しなかった。  にたりと笑う兄は、真っ黒で。  オレの中の一番怖い存在。  怖いからこそのカリスマ性がある。  オレが絶対的な存在の兄に惚れてしまうのは、避けられない事柄だった。  服を抱え、下半裸のままにオレの部屋に逃げ込んできた大地。 「怖かったあぁぁ……」  抱えていた衣服を横へ投げ出し、ベッドに座り漫画を読んでいたオレの腰に縋りついた大地は、ぐりぐりと頭を擦りつけてくる。  手にしていた漫画をぱたりと閉じ、腰に抱きつく大地の頭をぽんっと叩く。 「早かったな?」  兄に犯されるのか、一緒にいたあのオジサンに犯させるのか、どちらにしても大地のケツは、無事では済まないだろうと踏んでいた。  数分も経たずに、たぶん無傷であろう状態で逃げ帰ってきた大地に、オレは首を傾げた。 「オジサンで助かった……。もう勃たないからって解放された」  動きを止め、ほっと安堵の息を漏らした大地の鼻先が、オレの股間に沈む。  顔を埋めたままに、大地の呼吸が荒くなる。 「お前。何してんの?」  オレの股間に顔を埋める大地の髪を掴んだ。  そこから剥がそうと髪を掴むオレに、大地の息遣いは、変態並みに激しくなる。 「はっ。勃った………」 「は?」  心底、気怠げに声を放つ。  確かに剥き出しの大地の下半身で、ぐぐっと上を向いたペニスが存在を主張していた。  恐怖から解放された大地の心は、安堵と共に興奮を呼んだらしい。  でも、股間の臭いを嗅ぎながら、息を荒らげる大地に、オレは不快しか感じない。 「ざけんな。お前になんて掘らせねぇからな」  掴んだ大地の髪を引っ張る。  ぶちぶちとした感触にも、大地の興奮は治まらない。 「ここが、切ない……」  オレの腰から剥がした右手で自分の尻に触れた大地は、ぐちゅりと音を立て、指を差し込んだ。 「はっ……。届かないぃ……、なぁ、挿れて?」  ぐちぐちと入口を弄りながら、ゆるりと身体を離した大地は、切なげにオレを見上げる。  強情る大地の瞳に、ぞわりとした感覚が背を撫でた。 「掘られてぇ、の?」  きゅっと眉根を寄せ見下ろすオレに、大地は居心地が悪そうに瞳を游がせた。  そろりと近づいた大地の手が、オネダリでもするように、オレの股間を柔く掴む。 「………挿れんなら、いっか」  ぼそりと放った声に、申し訳なさげな色を纏いながらも期待を抱く視線が、オレを見やる。 「これ、勃てられたら、挿れてやってもいいけど?」  萎れたままに掴まれたそこを指差し、どうする? と挑戦的に煽るオレ。  舌舐りをした大地は、片手でオレのズボンの前を寛げる。  下着が覗くそこに鼻先を突っ込んだ大地は、萎えたままのオレのペニスに唇で噛みついてくる。  大地の唇についているピアスの固い感触が、柔らかいそこを捏ねるように刺激する。  1度口を離した大地は、邪魔くさいと言わんばかりに、オレの下着のゴムに指をかけ、ぐっと引き下ろした。  ふにゃりと萎れたオレのペニスが、ぼろんと外へと飛び出す。  ペニスの先端を舌で掬った大地は、そのまま口腔内へと誘った。  なんの躊躇(ためら)いも戸惑いもなく、オレのペニスを咥える大地に、どこか冷えた感情が言葉を放つ。 「お前、なんか盛られた?」  不思議に思い問うオレに、大地は考えあぐねる。  思考を巡らせようと右へ左へと首を傾げながら、口一杯に頬張るペニスを可愛がる。  柔らかく熱くぬかるんだその場所は、理性とは別の領域を活性化させる。  オレの下半身も、ご多分に漏れず、頭とは別の生き物だ。  刺激されれば勃つし、気持ちの良い方に簡単に傾き転がる。

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