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第63話 ちぎりたい鎖 <暴露> 13~ Side M
「これ、なに?」
半分に引き裂かれた写真を胤樹の眼前に突きつけた。
少し前の社員旅行で、俺の同期がたまたまカメラに収めた俺と白根さんの奇跡のツーショット。
俺も白根さんも、お互いを見てはいない。
ただ偶発的に撮れてしまったものを、俺が映っているからと、デジタルデータとしてくれたのだ。
渡されたデータの中に、これを見つけた時、思わず笑みが零れた。
浴衣姿で酒を片手に、談笑している白根さんの写真。
こんなに楽しそうに笑っている白根さんの姿は、珍しい。
浴衣から覗く顔と首までもが、赤くなっており、酔っているのは明白だ。
赤い顔に微かに着崩れた浴衣は、エロさが勝ちそうだったが、満面の笑みが可愛さを上回らせていた。
スマートフォンの待受にするわけにもいかず、俺はそれをプリントアウトし、定期券のケースに忍ばせていた。
帰り際、電車に乗るために定期券のケースを出し、改札を通過する。
電車を待っている間、内ポケットへとしまう前に、白根さんの笑顔が見たくなり写真を引き出し、固まった。
綺麗に半分に引き裂かれた写真に、許容を越えた苛立ちが、冷酷な俺を引き摺り起こす。
家に帰り着き、そのままの格好で胤樹の部屋に入った。
課題でもこなしていたのか、勉強机の上には広げられた教科書とノート。
俺の帰宅に気づいた胤樹は、出迎えようと腰を上げ、振り返る。
突きつけられる破れた写真に、胤樹は、言い訳を紡ぐわけでもなく、不服げに瞳を逃がす。
文句を言いたそうな下唇を噛み締め、黙る。
悪いとは思っているが、謝るのも癪に触るといった顔だ。
6つ下の弟、胤樹は、高校2年になっても甘えただ。
外ではそれなりに体裁を気にするが、一歩家に入れば、俺にべったりだ。
胤樹は、重度のブラコンだ。
俺が、好きで好きで仕方ない。
両親の不仲に漬け込み、お前の味方は俺しかいないと植え付けた。
自分の楽しみのために、胤樹を利用し続けた。
恋愛のいろはを教えたのも。
オナニーを教えたのも。
エロいコトを教えたのも……、俺だ。
俺に依存するように、仕向けた。
何も考えずに、従っていればいいのだ、と。
元々仲の悪かった両親が去年、離婚した。
俺たち2人は、父親を選んだ。
離婚から半年も経たずに、父の転勤が決まった。
就職していた俺と、転校したくない胤樹が、この家で2人暮らしするコトになった。
それから胤樹のブラコンは、さらに度を増した。
胤樹をこうしたのは、間違いなく俺だ。
今の胤樹を形作ったのは、紛れもなく俺、なんだ。
だけど。
白根さんとの仲が順調に進み始めた今、胤樹の存在が疎ましくなってきていた。
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